原爆投下50周年にあたる1995年、アメリカのスミソニアン博物館では「原爆展」が予定されていた。広島平和記念資料館から貸し出される被爆者の写真も展示予定だった。ところが第二次世界大戦の退役軍人団体と下院からの強い反対要請があり、展覧会は中止となった。
退役軍人団体は「展覧会は大戦を始めた日本の役割と、日本軍の残虐行為を軽く扱うものだ」と主張した。また、多くの退役軍人が原爆投下は終戦を早め、米兵の命を救ったとも考えていた。この主張は現在も多くのアメリカ人が支持している。
“キノコ雲”に憧れるアメリカの映画
原爆のリアリティを知らされないまま、「原爆はすごい」とだけ教わったアメリカの若者たちはスーパー・ウェポンとしての原爆に憧れ、映画作家となった者たちは映画に多用した。映画ファンの中には「どの映画の核爆発シーンがすごいか」と語る者すらいる。
以下は核爆発のシーンがあるヒット作品の一部。いずれも人気男優が主役のアクション映画であり、日本でも公開されている。なお、『ウルヴァリン: SAMURAI』は長崎での原爆を取り上げているが、他はアメリカ国内や宇宙での核爆発を描いている。
2013
『ウルヴァリン: SAMURAI』
主演:ヒュー・ジャックマン
2012
『アベンジャーズ』
主演:ロバート・ダウニー・Jr.
2012
『ダークナイト ライジング』
主演:クリスチャン・ベイル
2008
『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』
主演:ハリソン・フォード
2002
『トータル・フィアーズ』
主演:ベン・アフレック
1998
『アルマゲドン』
主演:ブルース・ウィリス
1996
『インデペンデンス・デイ』
主演:ウィル・スミス
1991
『ターミネーター2』
主演:アーノルド・シュワルツェネッガー
お決まりの「原爆描写」に変化が
昨年、これまでのハリウッド映画とは異なる「原爆描写」の作品が公開された。マーク・ウォールバーグ主演の『マイル22』(監督:ピーター・バーグ)だ。
劇中に核爆発のシーンはないが、放射性物質セシウム139拡散の危機が訪れる際に日本の原爆被害が引き合いに出される。ウォールバーグ演じるCIA工作員は同僚にセシウム139の威力を伝えるためにPCモニターに日本の被爆者の写真を映し、説明する。