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支配下登録ならず……ウエスタン首位打者のホークス・田城飛翔選手はきっと這い上がる

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/08/13
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急成長のキッカケは“晃さん”

 7月中の支配下登録を逃してしまったとはいえ、今季大飛翔中の田城選手。昨年までのプロ2年間での主戦場は3軍で、2軍ではわずか2安打だった田城選手がリーグ最多安打を放つまでに急成長した一番のキッカケは、“晃さん”でした。

中村選手と隣同士でバッティング練習中 ©上杉あずさ

 勇気を持って今年の自主トレで中村晃選手に弟子入りを志願すると、快く受け入れてもらいました。成人式にも出席せず、自主トレで貴重な学びの時間を過ごしました。すると田城選手の中で何かが変わり始めました。

「晃さんがマジ練習してたんで……」

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 先輩の凄まじい練習量を見て、自身の取り組みを変えざるを得ませんでした。練習量が増え、疲れが溜まったせいか寝ている時に金縛りにあうこともあったとか。

 また、積極的に質問をするようにもなりました。「バッティングの常識が全部変わった」というほど発見の毎日でした。例えば、今まで“左手で押し込む”感覚で打っていたのを、“右手ではらう”感覚に変えたことでバットがスッと出るようになり、タイミングが取れるようになりました。

 取り組みが変わると早速3、4月度のファーム月間MVPに輝くなど結果が出ました。少し自信もついてきて、周りからも「田城、バッティング掴んだな」と持てはやされるようになりました。すると、中村選手にこう囁かれました。

「そんなこと言ってたら逃げていくからな」

 師匠は気を引き締めろの合図を送ってくれたのです。どんな時も冷静で黙々と努力し続ける先輩の一言には重みがありました。

どん底から這い上がった高校時代

 その後、調子が上がらず上手くいかない時期もありましたが、先輩のように黙々と練習し続けました。そして一度得たものに固執せず、中村選手から学んだことを試しながらも、自分に合う形を追い求めモデルチェンジしながらここまで戦ってきました。変化を恐れず、進化を求めるシーズンを送っています。

 7月中の支配下を目指してやってきて、それが叶わずくじけそうにもなったけれど、「どこかで誰かが見てくれている」そう信じてやるべきことをやり続けています。

“育成からも這い上がってみせる!”

 高校でもそうでした。名門・青森の八戸学院光星高校時代は3年生の時に春夏の甲子園に出場し、その大舞台でホームランも放つなど輝かしい経歴を持つ田城選手ですが、高校入学当初はどん底からのスタートだったそうです。ABCDの4組に分けられた中では一番下のDから高校野球生活が始まると、入部2日目で練習から出されたこともあったといいます。それでも、多くのプロ野球選手を輩出してきた仲井宗基監督に「レギュラーよりええ振りしてるな」と見初められ、そこから強豪校のレギュラーへとのし上がりました。入学時はベンチ入りできたらいいなと思っていた人が、レギュラーとなり活躍し、育成選手としてプロ野球の世界に飛び込むまでになりました。

高校の途中までは捕手。照れ隠しでキャッチャーマスクを付けて写真に写る田城選手 ©上杉あずさ

 今度は育成から支配下へ。入団1年目の春季キャンプで計測したスイングスピードは鷹の主砲・柳田悠岐選手に次ぐチーム2位のスピードをマークし、担当者を驚かせたことがあったのです。能力の高さは既に証明済み。あとは更なる結果を残すのみ! 求められるものが大きい分、プレッシャーもあるかもしれませんが、ゴールは支配下ではなく1軍での活躍。今オフの支配下登録を目指して引き続き猛烈アピールし、来季から一気に1軍で……。私たちも大きな夢を描いてこれからの田城飛翔の飛翔に期待しましょう。

 頑張れたっしー!

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