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福岡へ行って考えた、パ・リーグファンはセ・リーグファンがちょっと羨ましい理由

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/08/24
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パ・リーグファンはセ・リーグファンが少し羨ましい

 そこから関西でも、80年代末に南海と阪急がなくなって、福岡の人たちの話は他人事じゃなくなった。「ダイエーはともかく、オリックスってなんやねん」と思った関西人は当時の人口の90%を超えたに違いない。そうしているうちには2004年には、近鉄がそれこそ球団ごとなくなって、代わりに嘗てロッテがいた仙台に楽天が出来た。そうこうしている間に、関西では大阪球場も西宮球場も、藤井寺球場も日生球場も無くなって、ショッピングモールや、学校になった。

 関東ではロッテが川崎球場を数多くの人々に、男女の出会いの場と流しそうめんの会場として提供した後、さらなる強風を求めて千葉に去って行った。そして東映以来の名門チームだったファイターズが、選手たちが何度も東京ドームのロッカーの整理を繰り返し、無数の修学旅行生に球場見学の機会を提供した後、ついに2003年に北海道に去って行って、パリーグの球団は東京都心にはいなくなった。球場には今でも不満があるみたいだけど、すっかりスマートなイメージに変わって、甞て張本や大杉や白がいて、サインなしで野球するとか訳の分からないことして、三振と併殺を繰り返していた球団どこ行った、みたいな感じである。

 だから古くからのパ・リーグファンは誰もが少しだけ心の傷を抱えている。そう、我々が子供の頃、最初に両親や友人とともに、胸を躍らせながら足を運んだのと同じチームや球場の姿は、ちょうどこの平和台球場跡地がそうであるように、もうどこにもないからだ。だからパ・リーグファンはセ・リーグファンが少し羨ましい。ずっと同じ球団が同じ街にあって、ずっと応援できるなんて、実はとっても贅沢な事なんだ。その事はちょっと忘れないで欲しい。

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 そんなことを考えながら平和台球場の跡地をもう一度歩く。そういえば、ホークスが福岡に移ってからの何年間かの間は、ここは「ダイエーホークス」の本拠地でもあったんだよな。「ホークスの本拠がよりによってあのおんぼろの平和台かよ」と思ったりもしたもんだ。だって、草創期のパ・リーグでライオンズと覇を競い合ったホークスが、そのライオンズのかつての本拠地に移ったんだから、違和感があったのは当然だったんだよ。だって初代監督はあの「ミスターホークス」杉浦だったんだから。

 でも、そういえば今日のヤフオクドームは、(あくまで現状)最下位のオリックス相手の平日の試合でも満員御礼だった。ホークス、こっちに来てから大事にされたんだな、きっと俺たちももっと大事にしてやらないといけなかったんだ。福岡の人にちゃんとお礼言わなきゃな。

 よし、飲み直して、今度は大敗したホークスにも乾杯だ。でも、オールドファンとしてはやはり言いたいこともある。せっかく「にしてつDAY」のイベントをやるんだったら、オリックス戦ではなくて、西武戦の方が皆んな、喜ぶと思うぞ。それから三塁側で相手チームの悪口を大声で言うのは、ちょっと勘弁して欲しいかな。わざわざ球場に足を運んでくる相手チームのファンもいるんだから、お互いにお互いを大事にして行った方がいいと思うぞ。若い人はわからないかもしれないけど、そうでないと、また「僕らのチーム」がまたこの街からなくなってしまう時が来るかもしれないからね。

 さてホテルで飲みなおしたら明日も観戦だ。今日は大勝だったから、明日もきっと勝つだろう。ヤフオクドームも良い球場だからゆっくり観戦できるに違いない。まさか韓国から大きなニュースが飛び込んできて、試合観戦どころじゃなくなるなんていう事もないだろうし。クライマックスシリーズ進出はもう目前だ!

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