1ページ目から読む
2/3ページ目

 アジアの人口は約45億人。ただし2018-19シーズンのNBA でプレーしたアジア生まれの選手は渡邊(15試合)と周琦(ヒューストン・ロケッツ/1試合)の2名しかいない。

 アジアの先駆者としては2000年代に活躍した中国出身の超大型センター姚明が有名だ。一方の八村は204センチ・108キロというNBAの「標準体型」だし、ポジションもパワーフォワードかスモールフォワード。動きの鋭さ、速攻の先頭を走る走力、ミドルシュートの正確性といった総合力が評価されている。

アメリカで3シーズン……「渡米からの速さ」が凄い

 八村の凄さを物語る2つ目のポイントは「渡米からの速さ」だ。彼はゴンザガ大3年のシーズンを終えた段階で、ドラフトにエントリーをしている。これも日本人選手としては異例のスピードと言える。

ADVERTISEMENT

 NBAドラフトにエントリーできるのは19歳から。アメリカの高校を出た選手は卒業から最低1年経過していなければ資格を得られない。ただし逸材は最短コースでエントリーする「ワン・アンド・ダン」を活用している。今回の全体1位だったザイオン・ウィリアムソンも、デューク大でのプレーは1シーズンだけだった。

日本代表での八村 ©文藝春秋

 NCAAは大学スポーツの統括団体で、特にバスケはNBA以外のプロリーグを凌ぐレベルと人気を誇っている。アマチュアではあるがスカウトされ、奨学金などで特別扱いをされた選手たちがプレーするカテゴリーだ。日本人選手にとっては学業も含めてNCAA入りがまず難関となる。日本代表の富樫勇樹(現千葉ジェッツ)はアメリカの高校を卒業し「言葉の壁」がなかった。しかし希望した大学からのオファーを得られず、帰国せざるを得なかった。

 日本人がNCAAに進もうとする場合はまず、プレップスクールと言われる「大学進学のための準備校」に入るケースが大半だ。英語が母国語でない限り適応の時間は必要だろう。また現地で実際のプレーを見てもらえれば、大学のオファーも得やすい。

 渡邊は2013年3月に高校を卒業した後、同年の9月からセント・トーマス・モア・スクールに通い、1シーズンプレーした。ジョージ・ワシントン大でも4年間プレーしたため、高卒から5年半後のプロ入りだった。

 しかし八村は明成高を卒業して半年後には、ゴンザガ大のユニフォームを着ている。2014年のU-17世界選手権では得点王に輝いており、スカウトの網に早くからかかっていた。