かつてノルウェーの育休率はわずか3%だった
育休取得率が高い北欧のお父さんたちは、こうした不安とは無縁だったのでしょうか。実はそんなことはなく、日本のお父さんたちと同じ不安を抱えていたのです。彼らがこうした不安を克服していった経験は、日本でお父さんたちが育休を取りやすくする上で、とても参考になるものです。
かつてのノルウェーにおいては、お父さんの育休取得は珍しいものでした。ノルウェーでは1977年から有給の育児休業を取得することが法律で認められていましたが、実際に育休を取るのはお母さんばかりでした。しかし、1993年に男女の平等を進めようという観点から、法律で認められた育休42週のうち、4週はお父さんだけに割り当てられるようになりました。
普段の給料と同額の給付金が支払われたため、もしお父さんが取得しなければ、みすみす有給の育児休業を逃してしまうことになります。しかし、こんなうまい話であっても、当初、ノルウェーのお父さんたちは育休取得に及び腰でした。
たしかに、この改革は、育休を取るお父さんを増やしました。改革前のお父さんの育休取得率はわずか3パーセントほどでしたが、改革直後には35パーセントに上昇しました。もちろん、日本のお父さんたちと比べると、この数字ははるかに大きいのですが、現代のノルウェーのお父さんと比べると半分程度の数字なのです。
この数字はノルウェー政府からすれば不十分なものでした。1995年の政府白書では、お父さんの間で育休取得が進まない理由を検討し、「父親たちは、会社や同僚から仕事に専念していないと見られることを心配しており、職場のこれまでのやり方と違ったことをすることに対する不安を抱いている」のではないかという考えに至りました。
2006年に育休取得率70%超え
ノルウェーのお父さんたちが、同僚や上司の目を気にしていたと聞いて驚かれた読者の方もいるかも知れません。私たちは、外国の人々は思ったことをはっきり言う、人の目を気にしないと思い込みがちですが、意外とノルウェーのお父さんたちも日本人と変わらないところがあるのかもしれません。
ノルウェーでも日本でも、お父さんたちは育休の取得に不安を抱いていました。しかし、ノルウェーでは2006年時点で7割のお父さんが育休を取得するようになっています。ノルウェーの例から、日本の社会が学べることは少なくなさそうだと思いませんか。
経済学者たちは、ノルウェーのお父さんたちの間でどのように育休取得が広がっていったのか、そのプロセスを詳しく調べました(※1)。