ここ最近、男性の育児休業取得に人々の大きな関心が寄せられています。きっかけは、大手化学メーカーのカネカに勤務していた男性が育児休業取得を理由に不利な扱いを受けたという妻の訴えが、今年の6月にTwitter上で「炎上」を引き起こしたことです。ほぼ同時期に、自民党有志が男性の育休義務化を目指す議員連盟を設立したこともあり、識者はもちろん、一般の人々の間でも、男性の育児休業取得がかつてないほどの話題となりました。

男性の育児休業取得率は2017年に5%を越えたものの低水準にとどまる。「『家族の幸せ』の経済学」より引用

 どの国でも、お母さんと比べると、お父さんの育休取得率は低いのですが、日本のお父さんの育休取得率の低さは、残念ながら突出しており、わずか5%に過ぎません。一方、子どもと家族に優しい高福祉国家のイメージがある北欧の国々では、男性の育休取得率はかなり高く、70~80パーセントにも上ります。

フィンランド、スウェーデン、デンマークなど北欧の国々では男性の育休取得率が70~80%と高水準。「『家族の幸せ』の経済学」より引用

 こうした違いは、育休制度の充実ぶりの違いから来るのでしょうか。育休は、お父さんでもお母さんでも利用可能なものが中心ですが、お父さんの育休取得をうながすために、日本を含めたいくつかの国々では、お父さんだけが使うことのできる育休期間を設定しています。お父さんにとっての育休制度の充実ぶりを、異なる国々で比べるために、お父さんだけに割り当てられた育休期間と、その際に支払われる給付金の額に注目してみましょう。

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日本の育休制度は世界1位!?

 ユニセフの子育て支援策に関する報告書によると、驚くべきことに、育休期間と給付金額で測った日本の男性向け育児休業制度は、OECDとEUに加盟している41カ国中1位の評価を得ています。

 意外と知られていない事実ですが、制度という点だけから見ると、日本はお父さんにとっての「育休先進国」なのです。しかし、そうした制度の充実ぶりとはうらはらに、日本のお父さんたちは育休を取っていません。法制度が整っているのに、お父さんの育休取得が進まないのはなぜでしょうか。

 お父さんが育休を取らない、あるいは取ることができない理由としてよく挙げられるものには「昇進などキャリアに悪い影響がありそうだから」、「同僚や上司の目が気になるから」、「仕事が忙しいから」などがあります。こうした理由はもっともで、将来の収入が減ってしまうのはお母さんにとっても子どもたちにとってもマイナスですから、日本のお父さんたちは甘えていると切り捨ててしまうのはちょっとかわいそうでしょう。