「上司が休めば部下も休める」という教訓
彼らが注目したのは、同僚や兄弟といった近しい人が育休を取ったことが、お父さんの育休取得に及ぼす影響でした。
1993年の育休改革直後に育休を取ったのは一部の勇気あるお父さんたちでした。こうした勇気あるお父さんを、同僚あるいは兄弟に持っていた場合、育休取得率が11~15パーセントポイントも上昇したようです。一方で、義理の兄弟や近所の人が育休をとった場合には、育休取得に影響を与えませんでした。自分が育休を取るかどうかは、近しい人からは影響を受けるけれど、あまり関係の強くない他人からは影響を受けないようです。
さらに興味深いことに、会社の上司が育休を取ったときの部下に与える影響は、同僚同士の影響よりも2・5倍も強いことがわかりました。やはり、上司が率先して育休を取ることで、部下も安心して育休を取ることができるようです。
周囲で育休を取った人がいない場合、最初に自分が育休を取るのはなかなか勇気がいるものです。育休を取ることで、上司や同僚に冷たい目で見られないか、昇進の機会を失ってしまうのではないかといった心配がつきまといます。ノルウェーでは、育休を取ることで不利に扱われる事例は少なかったようですが、実際に何が起こるかは、育休を取ってみなければわからない部分があります。
育休制度が変わることで、一部の「勇気ある」お父さんたちが育休を取り、彼らが不利に扱われないことを目にした同僚たちがそれに続くといったメカニズムがここでは働いているようです。こうした育休の連鎖とでも呼ぶべきプロセスを通じて、2006年にはお父さんの育休取得率が70パーセントに達しました。
ノルウェーの経験から、私たち日本人は何を学ぶことができるでしょうか。