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日本のパパが育休を取るための「3つのステップ」

 まずは、お父さんが育休を取ることで、職場で不利に取り扱われないことをしっかりと保証することです。法律上は、育休取得を理由に不利に取り扱ってはならないとされていますが、職場での実態がどうであるかが問題です。行政機関が厳しく違法行為を取り締まるとともに、経営層が管理職に対して、法律に従った労務管理を行うようしっかりと指導しなければいけません。

 次に、職場で最初に育休を取る「勇気あるお父さん」たちが出てくるように、お父さんたちの背中を押してあげる必要があります。ノルウェーでは、育休改革がお父さんたちの背中を押しましたが、日本では法律上の育休制度の整備では不十分なようです。1カ月程度の短期については、制度上の給付金額を100パーセントにする、会社が独自に上乗せした給付金を支払う、あるいは育休を取ったお父さんを表彰するといった形でサポートしてあげるのは有効でしょう。

 そして、職場で最初に育休を取った「勇気ある」お父さんたちが、その後、不利に扱われなかったことを広く知らしめるべきです。育休を取った後、職場でどのように活躍したのか、昇進したのかといった情報を社内で共有することで、この職場は育休を取った男性社員を不利に扱わないのだということを、他の社員たちに確信させなければなりません。

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 これら3つのステップはいずれも実行は簡単ではありませんが、着実に取り組むことで、お父さんたちの育休取得は進んでいくでしょう。最初のひと押しが上手く行けば、あとは雪だるま式に育休を取るお父さんたちが増えていくということは、ノルウェーの経験が教えてくれています。

 拙著『「家族の幸せ」の経済学』の第4章では「イクメンの経済学」と題して、男性の育休取得を詳しく取り上げています。本稿で取り上げた話題に加え、男性が育休を取ると家族にはどんな影響があるのかといった疑問に対し、最新の経済学研究から得られた知見を紹介しています。

 この他にも、「保育園は、母親の『幸福度』を高める」、「保育園は、子どもの『攻撃性』を減少させる」、「母乳育児の『知能』『肥満』への効果はない」、「日本の低出生体重児の数は世界3位」といった科学的研究の成果をもとに、結婚、出産、子育てにまつわる事柄について、家族がより幸せになるためのヒントを紹介しています。

※1.     Dahl GB, Løken KV, Mogstad M. Peer Effects in Program Participation. Am Econ Rev. 2014;104(7):2049-2074. doi:10.1257/aer.104.7.2049