1ページ目から読む
2/3ページ目

自分の言葉に“体温”と“体重”を乗せるために

 結果論になりますが、結婚のタイミングも「なるほどな」とうならされました。実はこの8月で国会議員になってから10年の節目に当たります。彼は近年、自分の政治家像を大幅に刷新しようと「脱皮」というキャッチコピーを掲げ、いままでと違う試みに挑戦しています。中でも3年ほど前から、社会保障について本腰を入れて改革プランを練っています。

 ただ、最近の演説内容を聞いていると、地べたに近いような目線で国民を理解する、子育てや家計をどう営んでいくかといった点について、実感をともなっていないイメージがありました。本人もしっくりくる言葉を見出だせずにいる、そんなもどかしさをずっと感じていたんじゃないかと思います。

 例えば、小泉さんは、かつてこう語っていたことがあります。

ADVERTISEMENT

「子育てとか、少子化対策とか、それは小泉進次郎にはできないんです。独身だから。言っても説得力がないから」(2012年12月9日、埼玉県朝霞市での演説より)

©常井健一

 政治家の「言葉の力」という意味では、今年の参院選ではこうも述べていました。

「政治家イコール政策で世の中が動くわけではない。政治というのは面白いですよ。Aという政治家、Bという政治家、Cという政治家。3人の政治家がいて同じことを言ったとしてもAさんの言うことなら聞こうとなる。最後、政治は人がやるんです。政策は1人ではできません。多数が必要です」(2019年7月13日、愛媛県新居浜市での演説から)

 まさにそれが彼の課題です。国民から聞いてもらえる「Aという政治家」になるため、自分の言葉に“体温”と“体重”を乗せる。小泉進次郎という政治家の「言葉の力」の真髄は、カンペに書いてあるような整った文章ではありません。演説をする直前、5分、10分の隙間の時間で地元の名所をチラッと見たり、名物を食べたり、リアルな体験を重ねて言葉にする。社会保障や子育て論を語る上でも、そうした延長線上で自分も家庭を持つことによって「Aという政治家」になろうと思ったのではないでしょうか。

いろいろ考えた上で「今日しかない」

©常井健一

 メディア戦略としてもピンポイントの狙いを感じました。ぶら下がり取材では「今日しかない」と言っていましたが、8月7日は水曜日なので、「週刊文春」「週刊新潮」の校了後。さらには合併号のタイミングなので、2週間は週刊誌が追いかけられません。一方、好意的に取り上げるワイドショーや情報番組は大々的に報道してくれます。芸能人的な判断に近いですよね。セルフプロデュースのうまい小泉さんだけあって、まさにいろいろ考えた上で「今日しかない」だったのだと思います。

 いわゆる結婚願望について、彼の口から直接的に聞いたことはありません。ただ、日々の生活の中で、1日5、6回は言われているのではないかと思います。遊説の場で握手していても、有権者からは「早く結婚しろ」と言われていますからね。常にプレッシャーはかかっていました。「これってハラスメントですよね」と苦しそうな表情で漏らしていたこともあります。

 プライベートな事柄については、記者が質問すると、黙ってちょっと睨んでくるような対応でした。