1ページ目から読む
2/2ページ目
怖いけど……なんかカワイイ妖怪たち
当時ヒットした歌舞伎の演目の中にも、妖怪・幽霊は多く登場した。「東山桜荘子」は、暴君に家族もろとも惨殺された浅倉当吾が、もののけとなって次々と姿を変えつつ敵にまとわりつく話。歌川国芳による《東山桜荘子 織越館の場》は、歌舞伎で演じられたさまざまな場面を、みごと一枚の絵に収めてある。
江戸時代末期になると、武者絵と呼ばれる錦絵が流行した。英雄たちの活躍を描く冒険譚を、勇壮な絵柄に落とし込んだものだ。展示ではその格好の例、月岡芳年による《於吹島之館直之古狸退治図》も間近で観られる。
大判と呼ばれるサイズの紙を3つ繋いでワイドな巨大画面をつくる「大判錦絵3枚続」形式の作品で迫力たっぷり。大画面を埋め尽くすように描かれているのは、不気味ではあるけれど思わず笑みも漏れそうな愛嬌たっぷりの妖怪たち。本来の主人公たる英雄を差し置いて、引き立て役だったはずの妖怪のほうが大いに目立ってしまっているのだった。
展示室じゅうがばけもの尽くし。時代を超えて迫ってくる強烈な想像力の産物を堪能されたい。