文春オンライン

「偉くなるごとに、能力だけではなく人間性を強く問われる」という真理

お前らほんと何してんだよと思うような事件が多発していますが

2019/08/15
note

人としての器量が物を言う

 どうしようもない逆境に直面して聖人君子でいられる人は稀で、どうしてもイキったり号泣したりしてしまうのが人間の性(さが)だと思うんですよ。

 俗に「帝王学」と呼ばれる組織運営や人心掌握の術というのもいざという時には役に立たず、これまでも、印鑑のない借用書を記者会見で示しカバンに5000万円が入らずに都知事という名誉ある職を追われた猪瀬直樹さんを筆頭に「能力はきっとあるんだろうけど、しょうもない問題をやらかしてその立場にいられなくなった偉い人たちによる豪快な失脚劇」が歴史を彩っています。

 能力を発揮して偉い人になることはできても、人間性を備えて偉い人であり続けるのは別の条件なんだと痛感するところがありますし、こういうスキャンダルにおいてなお、「いや、そういう問題はあったけれども彼にはこういう美徳や功績があるから」と声がかかることは本当の意味での人としての器量だと思うのです。

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 私の身の回りでも、兵庫県明石市長の泉房穂さんが、部下へのパワハラ・暴言で騒動になり辞職に追い込まれて出直し選挙に出馬するという話がありました。泉さんの人柄は聞き及んでいたのと、泉さんの明石市長としての実績を見ると捨て置けない部分があったのでネットで記事にしたところ死ぬほどバズったんですが、泉さん支持者だけでなく明石市政を知る当事者が泉さん擁護に回って出直し選挙で次点候補に3倍という圧倒的な得票差で再選した事例もありました。

明石市長・泉房穂氏の暴言をよく読むと、市民の命を守るための正論である件(山本一郎) - Y!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20190129-00112928/

「暴言」前明石市長・泉房穂さん、出直し出馬表明の真意を問う(追記・修正あり)(山本一郎) - Y!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20190307-00117356/

擁護されないパターン

 一方、セブン&アイ・ホールディングスがやらかした「7pay」では、初動対応の失敗もあって経営者が謝罪に追い込まれてもフォローの風は一向に吹かず、サービスそのものの早期打ち切りという屈辱的な結果に終わったのも記憶に新しいところです。いや、何してんすかね。コンビニ業界では最大手でもスマホ決済では後発だったという焦りから、とんでもないことをやらかして信頼を失墜させたセブンイレブンを擁護する声はメディアでもあまり聞かれません。

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 アスクルとヤフーの戦いでは、業績不振でどうしようもない経営者の岩田彰一郎さんの更迭を巡って、大株主であったヤフーと文具大手プラスから三行半を突き付けられるわけですが、他の少数株主はともかく社内から岩田擁護の声はほとんど出ず、ヤフーが嫌いなメディアからのヤフー批判が騒ぎになった程度で結局は社外取締役もろとも解任されるという結末になりました。