8月9日に宮内庁が、上皇后美智子さま(84)に乳がんが見つかったと公表しました。比較的早期の乳がんで、今後、手術を受ける予定だそうです。
報道によると、美智子さまは7月12日の乳腺エコー検査で左胸に腫瘤が見つかり、8月2日に針生検による組織検査で乳がんと診断されました。もう10年以上、定期的に乳腺検診を受けてきたと伝えられています(朝日新聞「美智子さま、比較的早期の乳がん見つかる 手術の予定」2019年8月9日)。
こうした報道を目にすると、「高齢でも乳がん検診を受けたほうがいいのではないか」と思うかもしれません。しかし、国は現在、「75歳以上の乳がん検診は推奨していない」ことをご存知だったでしょうか。
「マンモグラフィ単独法」が推奨されているのは74歳まで
国立がん研究センターが中心となって定めている国の指針で、乳がん検診は次のように評価されています(国立がん研究センター社会と健康研究センター検診研究部 検診評価研究室『科学的根拠に基づくがん検診推進のページ』の「がん検診ガイドライン 乳がん」)。
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・マンモグラフィ単独法(40~74歳):推奨グレードB
40~74歳を対象として、死亡率減少効果を示す相応な証拠があります。不利益については偽陽性、過剰診断、放射線誘発乳がんの発症の可能性があります。これらの結果から、推奨グレードBとし、対策型検診・任意型検診の実施を勧めます。
・マンモグラフィと視触診の併用法(40~64歳):推奨グレードB
40~64歳を対象として、死亡率減少効果を示す相応な証拠がある。不利益については偽陽性、過剰診断、放射線誘発乳がんの発症の可能性があります。これらの結果から、推奨グレードBと判断し、対策型検診・任意型検診の実施を勧めます。ただし、視触診が適正に行われるための精度管理ができない状況では実施すべきではありません。
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このように、「マンモグラフィ単独法」が推奨されているのは74歳まで、「マンモグラフィと視触診の併用法」は64歳までとなっています。ちなみに、美智子さまが受けた「乳腺エコー検査」は「推奨グレードI 」、すなわち死亡率を減少させる効果が不明なので、「対策型検診としては推奨しない」という評価です。
※注1. マンモグラフィ=乳腺専用のX線撮影装置。
※注2. 対策型検診=集団全体の死亡率減少を目的として行う公共的な検診で、日本では主に市区町村が行う住民検診のことを指す。これに対し、個々人が自分の判断により人間ドック等で受ける検診のことを「任意型検診」と呼ぶ。