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 それらに加えて、高齢者はがん治療によるダメージも考慮しなければなりません。近年は、身体へのダメージが少ない手術の工夫や、抗がん剤の副作用を軽減する支持療法が進歩したおかげで、80歳、90歳を超えるような高齢者でも安全に手術を受けられる人が増えました。

がん治療に耐えられるかどうかは個々人の体力次第

 とはいえ、外科医に聞くとがん治療に耐えられるかどうかは、年齢よりも見た目の若さ、すなわち個々人の体力に大きく依存すると言います。元気に退院していく高齢者がいる一方で、手術をきっかけに体力を大幅に落としてしまう人や、術後に脳卒中を起こすなどして、寝たきりになってしまう人も一部にはいます。

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 がん検診に関しては「早期発見・早期治療すれば、がんは治る」などと、いいことばかり聞かされることが多いのですが、がんを見つけたばっかりに生活の質を大幅に落とし、寿命を縮めてしまうデメリットもあり、とくに高齢者はデメリットが大きくなる可能性があるので熟慮が必要なのです。

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「検診はメリットばかりでない」と理解した上で選択を

 美智子さまも今年6月、息切れが続くことから検査を受けたところ心不全の診断指標となる数値が高く、心臓に弁膜症が見つかったと報道されました。また、最近は急激に体重が減少して、全体に体力の低下が心配されていると伝えられています。経験豊富で優秀な医師団がつくはずですから、最善の治療が行われるに違いありませんが、ご高齢なだけに安全に手術が行われることを祈るばかりです。

宮内庁提供

 美智子さまのニュースを目にして、検診を受けようと思った高齢者や、高齢の親に検診を勧めた人もいるかもしれません。しかし、検診の推奨年齢が限られていること、メリットばかりでなくデメリットもあることを十分理解したうえで、賢い選択をしていただければと思います。