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2019/08/20

「がん検診の推奨年齢に上限があるなんて知らなかった」という人も多いのではないでしょうか。84歳の美智子さまが乳腺検査を受けて、乳がんを早期発見できたからといって、それに見習ってみんなが「高齢でも乳がん検診を受けたほうがいい」とは言えないのです。

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なぜ高齢者の乳がん検診は推奨されていないのか?

 それにしてもなぜ、75歳以上の乳がん検診は推奨されないのでしょうか。日本乳癌学会の診療ガイドラインに、次のようなQ&Aが記載されています(日本乳癌学会「乳癌診療ガイドライン」2018年版)。

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FQ1. 日本人の乳がんマンモグラフィ検診の至適上限年齢は何歳か?

ステートメント
・上限年齢は、75歳以上では死亡率低減のエビデンスがないことや、人口動態統計に基づく10年後死亡リスクを勘案して75歳程度とすることが妥当と考える。

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 第一の理由は、75歳以上を対象にした臨床試験(ランダム化比較試験)が存在しないことです。信頼できるデータがないので、75歳以上の方々が乳がん検診を受けたとしても、乳がんによる死亡を減らすことができるかどうかわからないのです。

 第二の理由は、75歳以上の年齢になると、乳がん検診を受けずに乳がんで死亡するリスクよりも、加齢のために亡くなるリスクのほうが上回ると考えられることです。つまり、75歳以上になると乳がん以外の病気や老衰で亡くなる可能性も高くなるので、乳がん検診を受ける意味がなくなってしまうのです。

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「偽陽性」や「過剰診断」などのデメリットも……

 実は、がん検診を実施している諸外国では、以前から検診に上限を設けており、上記のQ&Aでも「69歳ないし74歳程度を上限とするのが一般的」と記載されています。しかし、日本で上限が検討され始めたのは、昨年になってからのことでした。そのためか、乳腺専門医やがん検診研究者等に聞くと、80歳を超えるような高齢者でも(とくに、真面目な人ほど)がん検診を受ける人が少なくないそうです。

 しかし、乳がん検診には国の指針でも示されている通り、「偽陽性」や「過剰診断」などのデメリットがあります。偽陽性は、結果的にがんでなかった異変を「がんの疑いあり」と判定することで、余計な精密検査(針生検など)を受けることにつながります。また、過剰診断は、本来は放置しても命を奪わないがんを見つけてしまうことで、無益な治療を受けてしまうことにつながります。