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「数字を持っているから叩きます」N国党・立花孝志党首の本当の恐ろしさは“緻密な戦略”にある

規格外の「泡沫候補」は今、何を見据えているのか?

2019/08/20
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落選を見越した緻密な選挙戦略

 もう一つ、立花氏が規格外の「泡沫候補」だった、大きなポイントがある。それは2013年のN国党の結党時から、具体的に落選も含めた選挙戦略を考えていたことだ。

 当たり前だが、普通の「泡沫候補」は、当選したい選挙に立候補する。有名人やプロの政治家のように、落下傘で当選しそうな地方選挙に立候補し、実績を作ったら国政へ転身というテクニックは用いない。しかし彼はそのテクニックを最初から計画・実行していた。

©iStock.com

「立花さんは最初から『私の目標は6年後の参院選で1議席取ること。そのために今から参院選までのすべての選挙スケジュールを調べています』と言っていました。選挙に初めて立候補し、落選した直後ぐらいの時ですよ。変な事言うなと思っていました。でもその2年後に、船橋市議選で当選したんです。そして1年で市議を辞めて、東京都知事選に立候補しました」(フリーランスライター・畠山理仁さん)

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「僕にあるのは選挙のテクニックだけ」

 立花氏は自分なりに選挙を数値化・研究し、それが正しいか実践した。例えば供託金300万円を払って話題になる奇抜な政見放送をやり、知名度を上げてから当選確率の高い選挙に立候補した。他の立候補者への研究も熱心で、2014年の大阪市長選挙ではマック赤坂氏の選挙ボランティアにも参加している。

僕にあるのは選挙のテクニックだけ。(中略)選挙は数字。実は少数派でも当選する方法がある」(立花孝志・2019年8月2日 日本外国特派員協会・記者会見)

マック赤坂氏(『映画「立候補」』より) ©ワードアンドセンテンス合同会社

優秀な経理マンとして重宝されたNHK職員時代

正直ものがバカをみない日本にしたい。戻したい」(立花孝志・2019年8月2日 日本外国特派員協会・記者会見) 

 元NHK職員の立花氏は、とにかく正直さにこだわってきた。1986年のNHK入局試験では「我が家は受信料を払っていません」と正直に言って採用された。そんなNHKに忠誠を誓った立花氏は、優秀な経理マンとして現場スタッフから重宝され、東京本社のスポーツ報道センターへ異動となる。

東京都渋谷区にあるNHK本社 ©iStock.com

「一度だけソルトレイク・オリンピックで経理をしていた彼と接点がありました。普通の経理は、この領収書は落とせませんとだけ言うんです。でも彼はこの方法なら落とせますよと言ってきた。今の時代にもこんな人がいるのかと不思議に思った」(元NHK記者・ジャーナリスト立岩陽一郎さん)

 2005年4月、立花氏はNHKのオリンピック不正経理を週刊文春に実名顔写真入りで内部告発、19年間勤めたNHKを依願退職した。

内部告発したら、全員電話に出なくなった。廊下ですれ違っても話もしてくれない。辞めざるを得ない状態。38歳のとき僕が放った文春砲は不発だった」(立花孝志・2018年8月14日配信 「立花孝志51歳の過去と未来について」)