観客を魅了したダンスは「踊りというより、体を解き放つという感じ」
──映画を見た人の多くが絶賛するのが、映画の冒頭とラストで踊られるあなたのダンスです。見たことのない振り付けで、1度見ると忘れられません。あれは誰かコリオグラファー(振付師)がいたのでしょうか。
フェロ いえ、振り付けではなくて、僕のオリジナルです。踊りというより、体を解き放つという感じかな。普通は、男はこう踊って、女はこう踊るというのがあるでしょ。でも、そうじゃなくて、その人の体が欲する動きや踊りっていうのがあると思うんです。僕は、家で音楽をかけて、鏡の前で練習して、どれがカルリートスの踊りにふさわしいか、幾通りも試してみました。そのうち「これだ!」というのが見つかって、翌日、監督のルイス(ルイス・オルテガ監督)の前でやってみたら、ダメだと言われちゃって……。でも、それでもめげずに踊ってみせていたら、まわりで見ていた人がいいと言ってくれて、それで監督を黙らせたんです(笑)。
──映画の中で印象的なのが、70年代の音楽やファッションです。フェロさんは98年生まれですが、映画の舞台となった70年代をどのように感じましたか?
フェロ 70年代の美的センスは最高だと思います! 車も、ファッションも、色が鮮やかで、華やかで、音楽も情熱的。今のようにスマホもAIもない時代だけど、70年代を自分の目で見てみたかったなと思いますね。
──撮影中、心に残ったエピソードはありますか?
フェロ これはとても大切なシーンなんだけど……親友で共犯者のラモン役のチノ・ダリンと車に乗るシーンがあります。そこで僕は彼の口に指を入れるんです。監督のルイスが「カット!」って言うたびに手を洗いにいかなくちゃいけなくて……というのは、チノが毎回「手は洗ったのか?」って聞くから(笑)。人生で一番衛生的な時間でした(笑)。チノはちょっと神経質なところはあるけど、いい人です。
──初主演作というプレッシャーはありませんでしたか?
フェロ 大スクリーンでたくさんの人が見るし、この映画のバックには大金が動いているし(笑)、何も経験がないのに、みんなが僕の演技を見ていると思ってしまうと、うまくやるのは難しいと思いました。自分ができることを最大限に出すにはどうしたらよいかと考えて、責任感というものをいったん忘れることにしました。そして、この高速のジェットコースターに飛び乗ったんです。