1971年、天使の顔をした17歳の連続殺人犯に世界は発情した──。
実際の事件をもとにし、2018年アルゼンチンでNO.1ヒットを記録した映画『永遠に僕のもの』が公開中だ。中でもSNSなどで人気沸騰中なのが、主人公を演じた“南米のディカプリオ”ロレンソ・フェロである。
「アルゼンチンに実在した凶悪犯だと、頭では何度も反芻しながらも、心はロレンソ・フェロ演じる“黒い天使”の猛毒(フェロ・モン)に引き寄せられ、ついには魅了されてしまう」(小島秀夫/ゲームクリエイター)、「少年の顔は、1度見たら忘れられない」(鈴木敏夫/スタジオジブリプロデューサー)と映画界の大御所たちもその魅力に太鼓判を押す。
『永遠に僕のもの』は第71回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」へ正式出品され、第91回アカデミー賞外国語映画賞アルゼンチン代表作品にも選出されたが、ラップシンガーとして活躍していたフェロはこれが初主演作。
実は、フェロはインスタグラムのアイコンをポケモンのミュウツーにするほどゲームが大好き。来日時には自前のマリオTシャツを持参し、根っからのアーティスト気質なのか、インタビューの合間も隙あらば紙にイラストを落書きしていた(これがまた上手い!)。そんなフェロに話を聞いた。
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「息をするように殺人を犯すカルリートスは、まるで火星人みたいでした」
──あなたが演じたカルリートスのモデルとなったカルロス・エドゥアルド・ロブレド・プッチは「ブラック・エンジェル」「死の天使」と呼ばれ、アルゼンチン犯罪史で最も有名な連続殺人犯と言われています。彼のことは知っていましたか?
フェロ いえ、実は知りませんでした。Googleで検索しました(笑)。
──プッチは1971年から72年に逮捕されるまで11人の殺人を犯しましたが、カルリートスを演じてみて、なぜ彼はこのような行動をとったのだと思いましたか。
フェロ 人がドラッグにハマるのと一緒で、日常に飽きて刺激を求めていたんだと思います。きっと群れの中の1頭の家畜でいることに飽き飽きしていたんじゃないかな。人を殺すというのは、退屈していた彼にとっては「新しいこと」だったのかも。淡々と、ごく自然に、息をするように殺人を犯すカルリートスは、まるで火星人みたいでした。
それに、この犯罪が起きた70年代は、銀行強盗のような犯罪映画が流行していたから、その影響もあるんじゃないかな。僕も子どもの頃、ヒーロー映画を見ると階段から飛び降りたりしてたし(笑)。