「今の時代にそれやるの?」という医大の入試不正問題
2018年に東京医科大学をはじめ、複数の医学部で女性の受験生や浪人生に対する不正な得点操作が発覚した問題は、まさに「今の時代にそれやるの?」というような事例の典型でありましたが、これを「単なる大学側の差別的意識ゆえの不正」として片付けてしまってはならなかったはずなのです。背景の根本には「医師の人員不足問題」などがあって、おそらく現場では過酷な労働環境に置かれている医師たちがいて、そんな中では「途中で辞めたり長期休暇を取らずに、長く働き続けてくれる人材を獲得したい」という切実な事情があったことでしょう。
しかし、大学側が女性を不利に扱った理由について「女子が男子よりも精神的な成熟が早く、受験時はコミュニケーション能力も高い傾向にあるため補正をする必要があった」とか変なことを言い出してしまったがゆえに問題がさらにややこしくなり、結果的には問題の本質が解決されるに至らず、なんとなく時間だけが経過して騒動自体が収束してしまったのは、大変残念なことです。
過酷な現場を見て来たであろう人たちが問題をひた隠しにするのではなく、「育児の負担が女性に大きくかかり、女性が長期休職・退職せざるを得ない日本社会の現状では、男女の雇用機会均等の実現は難しい。この件については、もはや私たちだけでは解決ができない」と言ってくれれば良かったのに。
出産後の女性の採用について、人事は……
先日、とある中小企業の人事をしている女友達に「実際、女性の採用ってどうなの?」と聞いてみたところ、ひどくにがにがしい表情で「難しいんだよねえ」という答えが返ってきました。
同じ女性として、そしてこれから結婚・出産を考えている身としては、友人も「子どもがいる女性を積極的に採用して、出産後のキャリア形成を応援したい」と考えているものの、実際のところ、未だに育児や子どもの送り迎えに関しては女性に比重が大きくかかっているのが一般的です。そのため「社会全体が女性の社会進出を後押しする体制を整えている、または努力している」とは言えず、会社の長期的な利益を考えると、彼女たちの採用に対して消極的にならざるを得ないし、男性の応募があればそちらを優先している、と言うのです。
本来、国が本気で「女性が輝ける社会づくり」を推し進めようとしているのであれば、保育士の処遇改善を含む「待機児童問題」の解消や、女性の復職に対して消極的である民間企業からどのように協力を得るかなど、より「現実的な」指針が必要なはずです。「日本は女性の社会進出を実現していますよ!」と掲げるだけ掲げて、にもかかわらず内情は何も変わっていないし、大きな問題が発覚するまでは見て見ぬ振りを続けるから、ふとした拍子にボロボロとメッキが剥がれていくのであって。
とはいえ、多分世間一般の「常識」を変えることは容易なことではなくて、相当な時間を要するので持続的な取り組みが必要なのだろうな、と思う部分もあります。