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『なつぞら』アニメーション時代考証担当・小田部羊一が語る、あのころの日本の“なつぞら”

仕事も遊びも一生懸命だった時代のアニメーションづくり

2019/09/28
note

あの時代をきちんと描こうとしているスタッフの姿勢に敬服

――ご自身と仲間たちの青春時代が朝ドラになったことに対するご気分は?

 今でもアニメーターというのは、汚い、貧しいとかいう話しか話題に上らないのに、こうやってドラマになったことを考えると「そういう時代になったんだなぁ」と。とても感慨深いです。スタッフの方があの時代を描こうとして、きちんとつかまえようとしてくれている姿勢が嬉しいですね。

©文藝春秋

「あの人とだけは結婚しないように」と言われ……

――奥山さんとのなれそめをお聞かせください。

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 彼女は1年先輩でした。その関係ぐらいで、実際に僕の好きになるタイプではなかったんです(苦笑)。奥山はなんでもはっきり行動する人でした。僕らの同期とか周りの人たちも、まさか僕と彼女がそういうことになるなんて思っていない。誰もがびっくりして。僕の班長さんから「あの人だけはやめておきなさい」と言われたり(笑)。

  当時、忙しかったけれども遊ぶことも一生懸命やりました。みんなで海水浴や山登りに行くとか。社交ダンスを習っている方がいて、ステップなんかも知っており「やらないか?」という話になったらみんな集まって。夕方になると会議室のテーブルや椅子を片付けて広間にして。ステップを図にしたものを印刷して配ってね。みんな若いですから、流行りました。5時で仕事が終わるとすぐやって、また残業に戻るとか。そんなことが流行ったときが直接のきっかけで。全然意識下にない人と、ついそういうことになっちゃったんです(笑)。でも、よくよく考えると奥山の掌に乗っていたのかな? という気はします(笑)。