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『なつぞら』アニメーション時代考証担当・小田部羊一が語る、あのころの日本の“なつぞら”

仕事も遊びも一生懸命だった時代のアニメーションづくり

2019/09/28
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今一番輝いている広瀬さんが演じる安心感

――そういう意味では広瀬すずさんはぴったりだったのでは?

 ぴったりというより、今一番輝いている方だと思うので、「ああ、この人が演じてくれている」という安心感がありますね。他の登場人物も大体人物像としては合っているんですけど、外見はほとんど違います。でもキャラクターは生きています。役者さんがきちんと演じてくださっていますから。

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創造とは「命を吹き込む」こと

――小田部さんは、ファミコンゲームの『スーパーマリオブラザーズ』のキャラクターデザインや『ポケットモンスター』シリーズのアニメーション監修も手がけられていましたが、東映動画時代のご経験が活かされている部分はありますか?

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 やっぱりアニメーションというのはキャラクターに命を吹き込むということですから、ゲームであろうがなんだろうが、生きて見える、生き生きとしたものを描く……そういう作業は、確実にゲームの世界にも活かされていると思います。生きているように描く。一面的じゃない、ちゃんと気持ちが入った表情を描かないといけないし、きちんとキャラクターを掴まえないといけない。東映動画以来ずっとそうしてきたアニメーションの経験が役立っています。

――最後に『なつぞら』をご覧になった視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。

 今はもう誰もがアニメーションを観ていますよね? 当たり前のように観ている。僕は最初にアニメーションを観たとき、映像の中の世界がちゃんと命を持っているのを感じたことでアニメーターになったんですけど。そういう風に、当たり前のように見えているものに命を吹き込もうとして、がんばっている人々がいる。ということを、アニメをよく知らない方にも分かってもらえたら嬉しいですね。

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小田部羊一(こたべ・よういち)
1936年台湾台北市生まれ。東京藝術大学美術学部日本画科卒業後、’59年に東映動画株式会社へ入社。長編『太陽の王子 ホルスの大冒険』などで原画を担当。『空飛ぶゆうれい船』(’69年)で初の作画監督を務める。’71年高畑勲、宮崎駿とともに東映動画を辞し、『アルプスの少女ハイジ』(’74年)、『母をたずねて三千里』(’76年)でキャラクターデザインを手がける。『風の谷のナウシカ』(’84年)では原画で参加。’85年、任天堂株式会社に入社。『スーパーマリオブラザーズ』などのキャラクタービジュアルデザインを担当。現在、日本アニメーション文化財団理事ほか多数の役職を務めつつ講演や後進の指導、展覧会等精力的に活躍中。著書に『小田部羊一アニメーション画集』(アニドウ・フィルム/2008年)がある。

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