この指摘はオープン以来複数の宿泊客から指摘があったものだった。当初はインターネットの受信設備も全面刷新していたので指摘に対して首をかしげていたのだが、同一人物と思われる利用客から再三にわたって口コミで指摘を受けていた。
「なにがなんでも改善をしてほしい」
そこで、ホテル側からこの問題に対して原因の究明ミーティングを開催するように、私たちに要請があった。
昼下がりの朝食会場でミーティングはスタートした。冒頭、ホテルの社長は厳しい口調で「お客様の指摘はとても重たいもの。なにがなんでも改善をしてほしい」と述べた。
そこから丁々発止、3時間近くにわたって激論が続き、最終的に原因は新しく導入した別の電話回線とインターネット回線とが互いに邪魔をしあっていることではないかとの結論になり、至急改善工事を行うこととなった。
口コミは素晴らしいコミュニケーションツールでもある
翌週には事態がほぼ改善したことが確認されたのだが、口コミをチェックしていた私たちは驚かされることとなった。同じ利用客から次のような投稿があったからだ。
「ある日の昼下がり、このホテルの朝食会場でインターネットを使って仕事をしていたところ、ホテル関係者と工事業者が集まり、私が指摘をしたインターネットの問題について激論されていました。そして今回宿泊したところ十分に改善されていました。ホテルの社長さんが皆を叱咤激励していた姿に感動しました。そして全員で問題を解決されようとしていた姿勢に感銘を受けました。皆さまこのホテルは素晴らしいホテルです。ぜひ泊まってください!」
口コミは利用客がただ一方的に書き込みを行い、ホテルが一生懸命謝るだけのツールではない、実は素晴らしいコミュニケーションツールであるのだと思い知らされた出来事だった。たかが口コミ、されど口コミなのだ。