昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「時には起こせよムーヴメント」吉本の内部告発騒動という“失敗革命”を振り返る

速水健朗×おぐらりゅうじ すべてのニュースは賞味期限切れである

おぐら 吉本興業に所属する芸人たちの、反社会的勢力との繋がりと闇営業問題で、7月20日に宮迫博之と田村亮の2人が会見を行い、2日後の22日には吉本興業の岡本社長も会見を開きました。

速水 会見の中で話された具体的な内容については、連日メディアでも散々報じられたので、ここではあの会見からどんなことを感じたのか話していこうか。

おぐら 宮迫さんと田村亮さんの会見は、メディア史に残る重要な内部告発でしたね。

宮迫・田村亮会見 ©文藝春秋

芸の集大成を魅せた宮迫と、ありのままを正直に話し続ける田村

速水 宮迫の真に迫る涙の訴えも見応えあったけど、田村亮が社長から言われたことをそのまま話すだけでどんどん内部告発になっていったのがすごかった。

おぐら 宮迫さんは芸人としての話芸に加え、俳優として評価されるほどの演技力もありますから、話の抑揚や現場の再現性まで、さすがの出来でしたね。もちろん、芸や演技を超えた場面は多分にあったにせよ、18歳から芸人として培った話芸と演技力の集大成が、コントでもドラマでもなく、現実に事務所の社長を訴える会見でいかんなく発揮されたというのが、なんとも皮肉でした。

速水 一方の田村さんは、こんな正直者過ぎてよく芸人をやってこられたなって思うほど。

 

おぐら だから芸人のコンビっていうのは、本当に二人でひとつなんですよ。相方の田村淳があっての田村亮であり、当然その逆もしかり。

「テープ回してへんやろな」を「冗談だった」の0点会見

速水 一方で、宮迫・田村の会見を受けての社長の会見は、0点の見本みたいな会見だった。最近だと日大のタックル問題の時もそうだし、いまどき危機管理と会見の重要性がこれだけ言われているのに、なにも学んでいない。

おぐら 話し合いの席で言ったという「テープ回してへんやろな」を「冗談だった」で済まそうとしたのは、けっこうな失言でしたね。

速水 これまで身内のなぁなぁで済まされていたことにも#MeTooが及ぶってこと。告発があった時点で、社会は告発者をつぶそうとする組織から守らなきゃいけないし、告発された側は第三者委員会みたいな形でオープンにして、そのことに返答しなければならないというルールがある。なのに今回、吉本の社長は、解雇を取り下げることで「身内に戻します」「それでなかったことにしましょう」と会見で言った。

©吉田暁史

おぐら そうですね。ただ、ここで重要だと思うのは、宮迫さんはこれまで『アメトーーク!』のMCを見ても明らかなように、威圧的なキャラクターを芸風にしてたわけですよね。「どつくぞ」くらいのことは普通に言っていた。それと『スッキリ』で加藤浩次が、大崎会長と岡本社長のことを「みんな怖がってる」と発言したことも話題になりましたが、加藤さんも乱暴者のキャラクターをずっとやってきた人です。当然それはバラエティ番組の中での振る舞いだとしても、相手との関係性によっては脅威に感じたかもしれない。自分自身そういう芸風で長年やってきた人たちですら、相手が会長や社長になれば恐怖を感じるってことが証明されたのは、けっこう意味のあることだったなと。