個で見劣りしなくなった日本代表
日本人初のNBAプレイヤーは2004年の田臥勇太(宇都宮ブレックス)で、長らく2人目が現れていなかった。しかし昨年から渡邊、八村と立て続けに世界の最高峰でプレーする選手が現れている。
W杯の出場国ならばNBA選手は当たり前にいるが、この国にもようやくそう言う陣容が揃った。チームには元NBA選手で昨年4月に日本国籍を取得したニック・ファジーカス(川崎ブレイブサンダース) もおり、個で大きく見劣りすることはなくなった。八村、渡邊、ファジーカスは身長2メートルを超す大型選手で、タイプやポジションが重複しない。今の日本はどんなローテーションでも、平均2メートル前後の組み合わせをコートに立たせられる。
特に八村は日本のエースで、相手へのアドバンテージだ。205センチ・102キロの彼はスーパーアスリートで、何よりシュートが上手い。ドイツ戦は3Pも含めたシュートの成功率が60%を優に超えて、決定力が際立っていた。守備でも豪快なブロックショットで、相手のドライブに対する抑止力となる。
2006年と今の代表を比較すると……
今の代表はどういうレベルなのか? 日本は自国開催だった2006年の世界選手権(当時)にも出場しているが、今の八村と同じ21歳で大舞台を経験した竹内譲次(アルバルク東京)はこう述べる。
「当時は上には上がいると感じました。(日本が敗れたドイツの)ノビツキー、(スペインの)パウ・ガソルが全盛期でしたし、雲の上の存在という感覚がありました。でも今は手の届く相手になってきている」
06年の日本は1勝4敗で大会を終えている。そして2006年から16年のBリーグ開始まで、バスケ界には様々な混乱があった。
竹内も素晴らしいビッグマンだが、いつ話を聞いても「先輩風」は全く吹かせない。彼は代表と世界の距離感をこう語る。
「正直なところ(世界に)離されていっているなという実感がありました。今は若い素晴らしい選手が出てきて、一気にその差が縮まった。でも、まだ始まったばかりかなと思います」
ベスト16は現実的な目標
23歳の馬場雄大(アルバルク東京)はこの7月にNBAサマーリーグに挑戦し、八村や渡邊の次を期待できる存在。198センチと“小柄”だが、高速ドライブは各国に通用していた。馬場はW杯を前にした手応えをこう述べる。
「今までは『ユーロがどういう世界か?』が全く分かっていなかった。今回この3カ国とやらせてもらって自分たちのやれること、やれないことが明確になった。『ヨーロッパを倒す』という漠然とした夢が目標になった」
アメリカは今なお「雲の上」だが、ヨーロッパの2チームには勝つチャンスがある。ベスト16は現実的な目標として挑戦していい。
一方で竹内が「始まったばかり」と強調するように、今回のW杯はゴールでなくスタートだ。八村、馬場、渡邊はいずれも20歳代前半と若く、来年は東京オリンピックもある。八村と渡邊は合流して1ヶ月足らずで、戦術的な伸びしろも大きい。あとはもう、この道を力強く上がっていくだけだ。