世界という山に登りたくても高さが分からない。世界に本気で挑戦する機会もほとんどない。それが長く続いた男子バスケの現実だった。

 しかし今は違う。我々の代表は正確な地形図を持って、FIBAバスケットボール・ワールドカップ(W杯)に挑戦しようとしている。世界ランク48位の日本は9月1日にトルコ(17位)、3日にチェコ(24位)、そして5日には究極の難敵・アメリカ(1位)と対戦する。

 急成長を見せている日本が世界の高さを知る貴重な機会――。それが8月12日のニュージーランド戦を皮切りに行われた5度の国際試合だった。特に22日からさいたまスーパーアリーナで開催された3試合は、来年の東京オリンピックに備えたプレ大会。相手もアルゼンチン、ドイツ、チュニジアと有力国が揃っていた。結果こそ1勝2敗だったが、収穫は多かった。

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今年のNBAドラフト1巡目(全体9位)でワシントン・ウィザーズより指名を受けた八村塁 ©文藝春秋

「勝ちは勝ち」八村塁の力強い言葉

 ドイツは世界ランクこそ22位だが、本大会ではベスト8以上を視野に入れる強敵。しかし日本は24日の対戦で八村塁(ワシントン・ウィザーズ)が31得点を挙げ、86-83でそんな相手を倒してみせた。

「ドイツが100%だったか分からない」と謙虚なコメントを出す選手が相次ぐ中で、八村は力強くこう語っていた。

「僕らも100%の力を出したかと言われたらそうではない。修正点もあった中でも勝ちは勝ち。相手も『日本なんかには負けたくない』という気持ちで来ていて、それでも勝った。そこは大きいことですし、しっかり自信につなげたい」

ともにNBAプレイヤーである八村塁(左)と渡邊雄太 ©AFLO

「自信につながった3戦だった」

 25日のチュニジア戦は八村とキャプテンの篠山竜青(川崎ブレイブサンダース) が欠場。3クォーター終了時点で11点のビハインドを追う苦しい展開だった。だが日本は食い下がり、18377名の観客を沸かせる粘りを見せる。残り0.2秒で勝ち越されて76-78と敗れたが、内容は及第点だった。

 どの試合もリバウンドは課題として露呈したが、大型チームとのマッチアップで「慣れ」は進んだ。

 昨季はNBAを15試合経験している渡邊雄太(メンフィス・グリズリーズ)が、こう述べていた。

「自信につながった3戦だったと改めて思います。ドイツに勝てましたし、アルゼンチンとチュニジアには前半離された中で、粘って後半に追いつく場面があった」