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2019/09/01

個性が衝突し融合するクイーン ふたりでひとりのエルトン

 また、実在のミュージシャンを主人公にした音楽ドラマとしての醍醐味も忘れていない。その最たるものがバーニー・トーピンと共に名曲「ユア・ソング(僕の歌は君の歌)」を作り上げるシーンだ。作曲できないバーニーが、作詞をしないエルトンに手渡すコーヒーと卵の染みが付いた紙に書かれた歌詞。そこにはバーニーのエルトンに対しての固い友情と信頼、エルトンが秘めているバーニーへの恋心が同居している。まさに“僕の歌は君の歌”。この場面があることで、全編にわたってエルトンが歌う彼の人生と心情に沿った曲の歌詞がバーニーによるものなのだと気付き、その奇跡としかいいようのないシンクロぶりにとてつもなく感動してしまう。『ボヘミアン・ラプソディ』ではメンバー4人のバラバラな個性の衝突と融合が数々の名曲を生んでいくが、『ロケットマン』ではふたりでひとりともいうべきエルトンとバーニーの類まれな関係と作曲方法が明かされる。

©2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

 できるだけ史実を再現することにも気を配っていた『ボヘミアン・ラプソディ』と違って事実との差異も多いことも気にはなるし、苦悩する姿には自己憐憫に浸り過ぎなのではと感じる部分もある。エルトン・ジョンの製作総指揮だから“僕の映画は僕の映画”になっているのは、当たり前といえば当たり前かもしれない。さらに言うならばエルトンのような才能も富も名声もない者には、スターの気持ちはどうしたってわからない。それでも彼が“ここではないどこかへ”や“今の自分ではない誰かに”といった誰もが抱く願望を持っていたことは痛いほどわかるし、それを知ってほしいエルトンの叫びみたいなものは刺さってくるし、染みてくるのは確かだ。

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『ボヘミアン・ラプソディ』を飛び越えているいないかはともかく、少なくとも『ロケットマン』は観る者の胸にしっかりと着地するはずだ。

©2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

INFORMATION

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『ロケットマン』
8月23日(金)より全国ロードショー
配給:東和ピクチャーズ
https://rocketman.jp/

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