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西武ザック・ニールはなぜ“優良外国人“へと変貌したのか?――日本とアメリカの“違い”を考える

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/09/03

 釧路で行われた8月27日の日本ハム戦で勝利し、西武の外国人投手では1994年の郭泰源以来25年ぶりとなる7連勝。辻発彦監督が「毎試合投げてほしい」(日刊ゲンダイDIGITALより)と話すなど、防御率リーグワーストの西武で右腕投手のザック・ニールが獅子奮迅の活躍を見せている。

「日本に来て本当に良かった。俺はプロダクティブなピッチャーになることができた。過去10年間は、そうではなかったからね」

 今年アメリカから来日したニールと対話すると、多くを学ぶことができる。

 4月は4試合で1勝1敗、防御率5.95で2軍降格して“ダメ外人”のレッテルを貼られかけたが、6月20日に昇格して以降は9試合で7勝、防御率2.87と今や超のつく“優良外国人”だ。なぜ、華麗な変身を遂げることができたのか。

日本の野球に適応するには「時間が足りなかった」

「日本に来る外国人選手は全員、活躍できるだけの能力を持っています」

 スポーツ選手のマネジメントなどを手掛ける米オクタゴン社のアジア担当部長で、元巨人のマイルズ・マイコラス(現カージナルス)らを担当した長谷川嘉宣氏から聞いた言葉は、筆者が今年最もはっとさせられたものの一つだ。

 能力を持っているのに活躍できなかった一人に、2015年に西武に在籍した左腕投手のウェイド・ルブランがいる。8試合で2勝5敗、防御率4.23で6月以降は登板機会がなく、シーズン途中に契約解除された。

 ところが翌年アメリカ球界に復帰すると、17年にはパイレーツで50試合に登板し、18年マリナーズに移籍すると「大谷翔平キラー」として名を馳せたのだ。

 西武でルブランにもう少しチャンスが与えられていれば、果たしてどうなっていただろうか――。

 そう思うのは、4月まで苦しんだニールが6月以降にこれだけの活躍を見せているからだ。

現在7連勝中の“優良外国人”ザック・ニール

「スプリングトレーニングで左足のハムストリングをケガした。寒い中で走っていたからね。左足のハムストリングをケガしたのは初めてのことだった」

 例年、アメリカ南部の常夏の地でスプリングトレーニングに臨んできたニールにとって、まだ寒い日が多い2月の宮崎県南郷町は、これまでと極端に異なる環境だ。西武にとってプリンスホテルのある南郷でキャンプを張るのは自然かもしれないが、外国人選手の立場に立てば、寒い地で身体をつくるのは難しい面がある。

 2010年のドラフトでマーリンズに指名されたニールは、1シーズンを通じてメジャーリーグでプレーしたのはアスレチックス時代の2016年しかない。それだけに、日本にかける意気込みには並々ならぬものがある。

「間違いなく言えるのは、日本の野球を学ばなければならない。それには適応する時間が必要だ。スプリングトレーニングでそうしようとベストを尽くしたが、時間が足りなかった。最初は自分の状態を上げていくことが優先され、バッターの特徴や、日本の試合はどのように進んでいくかを感じるのは後回しになった」

グラウンドボーラーのニールが苦しんだ環境面の違い

 日本人投手がメジャー挑戦を果たすたび、決まって環境面の違いがクローズアップされる。特に大きいのはマウンドとボール、登板間隔の違いだ。まるで同じことが来日する外国人投手にも当てはまるが、メディアでこの点が注目されることは皆無に近い。首脳陣の配慮も足りないように感じる。

 一般的にメジャーと比べ、日本のマウンドは柔らかくて低い。この特徴は、ニールのようにボールを動かす投手にとってマイナスに働きかねない。

「日本の多くのピッチャーは体の前側を沈めながら投げるよね。でも俺の場合、質のいいシンカーとチェンジアップを投げるためには、身体の後ろ側を高く保っておく必要がある」

 ゴロを打たせてとるグラウンドボーラーのニールにとって、生命線はシンカー(ツーシームと形容されることが多いが、本人はシンカーと呼ぶ。球の質はほぼ同じ)とチェンジアップだ。両者とも打者の手元で沈むからゴロになりやすく、高いところから投げ下ろすことで効力を増す。逆に言えば、日本の柔らかいマウンドはニールの特徴を殺しかねない。

 環境面の違いに加え、ニールは春季キャンプで左足のハムストリングを痛めた。投げると痛みを感じ、フォームを微調整する必要があった。

「もともと俺の前足は強くないんだ。フロントサイド(前足側)の動きを変えて上半身の開きを少し早くした」