みなさん、筋肉を鍛えていますか?
もう20年近くも医療の取材をしているのですが、「健康維持には筋肉が肝心だ」と最近になってより強く思うようになりました。五十路にもなると駅の階段を昇るのが苦痛になり、目(老眼)と足腰から老化を自覚するようになります。そろそろ、高血圧や糖尿病など生活習慣病も用心しなければなりません。
そんな「50代の壁」を健康に乗り越えるためにも、30代、40代のうちから、筋肉を意識して鍛えておく必要があるのです。若い頃に怠けていると、そのツケが50代、60代になって出てきます。ですから不摂生を自覚している人は今日からでも、ぜひ筋トレを始めてください。
太ってなくても糖尿病の原因になる「脂肪筋」が怖い!
「週刊文春」にも書きましたが、実は、糖尿病予防には筋肉も重要なことがわかってきました。順天堂大学大学院医学系研究科代謝内分泌内科学が114人の日本人を対象に調べた研究によると、太っていなくても高血圧、高血糖、脂質異常症のどれか一つでもある人は、太った高リスクの人と同じくらい、筋肉の「インスリン抵抗性」があることがわかったそうです(「健康寿命をのばす“超簡単”筋トレ」週刊文春2017年1月19日号)。
これが何を意味するかというと、太っていなくても筋肉の質が低下している人は、糖尿病を発症するリスクが高まるということです。つまり、運動不足が続くと血糖をコントロールするホルモン「インスリン」の効きが悪くなり、筋肉が血中のブドウ糖をうまく取り込めなくなるのです。
通常、糖尿病を始めとするメタボリックシンドローム(メタボ)は、腸のまわりにつく内臓脂肪が元凶とされています。ところが、日本人を含むアジア人では、やせているのに糖尿病になる人が多く、その理由がよくわかっていませんでした。ですが、もしかするとやせた筋肉の代わりに脂肪がついた状態である「脂肪筋」が、太っていなくても糖尿病になる大きな要因になっている可能性があるのです。
なんと血中のブドウ糖の約8割は筋肉で処理されている
実際、福島県郡山市のうさみ内科(宇佐見啓治院長)では、糖尿病の患者さんにスクワットなどの筋トレを指導しており、筋トレを持続できた患者さんの中には、薬が要らなくなるほど病状が改善する人もいるそうです。実は血中のブドウ糖の約8割は、筋肉で処理されています。ですから、筋トレをすれば高血糖が改善するのは、理にかなったことなのです。