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高校野球とかいう“緩やかな殺人”をいつまで続けるのか

オールドファンの知っている世界とは別物なんですよ

2019/09/05
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チームに来ている高齢の自称コーチたちは……

 実際、たまに拙宅三兄弟も0歳の妹を連れて実家近くの野球チームに参加して炎天下の練習をすることはあります。昔に比べればちゃんと水を飲み、練習時間も2時間程度で切り上げるようにはなりました。監督も、子どもが怪我をしないように気を使っているのがよく分かります。ありがとう、監督。本来、集中して練習できる時間なんて小学生のうちはせいぜい40分ぐらいですし、それ以外は球拾いしたりランニングしたり、楽しく野球に親しんでくれればいいんです。野球を好きになってくれれば、それでいい。見ている保護者としてはそういう気持ちで接しておりました。

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 ところが、チームに来ている高齢の自称コーチたちはダラダラヘラヘラ練習しているように見えるのでしょう、「真面目にやれ」と大声で檄を飛ばします。まあ、集中していないと故障する恐れもあるし、不真面目に練習していては一つひとつのプレイも上手くはならない。順番待ちをしているときに他のチームメイトと喋っているか、他の子が練習しているのを見ながらちゃんと準備して待っているのかでは上達の具合が全然違うのは当然ですね。

 ただ、怒鳴り散らしていいことあるんですかね。「怒って部下に言うことを聞かせる」マネジメントはパワハラだし汚物だと企業研修では口を酸っぱくして言われますけど、野球指導の現場はいまだに昭和が続いている錯覚さえ覚えます。

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何でこんなに毎日長時間練習しているの

 もちろん汗だくになって素振りしている子どもたちのそばで細かくフォーム指導してくれるのはありがたいのです。ただ、フライボール革命のようなアッパースイングをしろとまではいわずとも、いまどき当てにいくダウンスイングを強制するほうが悪の場合があるし、最適なスイングはゴルフと違って野球はかなり骨格や筋肉の癖があるため個人個人違います。

 昔は、コース別打率を見て「苦手コースは克服できるもの」と考え、野球指導においては打てない球を打つことを重視してきました。現代野球では、プロも社会人も大学野球も高校野球も、バットを引く腕の力と回転する体幹の強さのバランスと、選手の持っている残像の強さで「得意ゾーンは練習でより得意に」「苦手ゾーンは練習ではほとんど克服できない」という実態が分かってきました。打てない球は見送るほうが出塁率が上がることが分かった以上、当てにいくバッティングでゴロを打つことがどんどん禁忌になっていきます。ゴロを打って、失打を悔いて一塁ベースにヘッドスライディングというのは見た目は美しいと思うファンはいたとしても、野球全体で見れば害悪でしかありません。

 このように、野球の技術指導も進歩していることを知らずに、「スイングは振り下ろせ」と画一的にコーチングしておるわけですよ。スイングスピードを上げるためには正しいフォームで強く引っ張る練習を基本として、グリップからステップまで納得のいく振り込みをすればいいと思うんですけどね、小学生なんだから。

 

 これが、高校での野球部の練習を見学すると、風景はさらに一変します。何でこんなに毎日長時間練習しているの。毎日200球とかブルペンで投げて、疲れ果ててフォームがヘロヘロになってる2年生ピッチャーとかたくさんいます。絶対取り返しのつかない怪我をするからやめろと口を出したくなります。