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高校野球とかいう“緩やかな殺人”をいつまで続けるのか

オールドファンの知っている世界とは別物なんですよ

2019/09/05
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 そして、大船渡の佐々木朗希投手が地方大会決勝で登板回避したことを受けて、日本中の高校野球ファンが高校に対して苦情電話を殺到させたり、張本勲さんがテレビ番組で「けがをするのはスポーツ選手の宿命で、痛くても投げさせるくらいの監督じゃないとダメ」と監督を批判して物議を醸すなどの問題を起こしたわけであります。

大船渡に苦情殺到「何で佐々木を投げさせない」職員対応に追われる
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190726-00000092-dal-base

 まあ、繰り返しになりますが、試合当たりの投球数だけではなく、高校の夏休みや試合場所の都合で試合日程が詰まってしまうことも大きな問題です。

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なぜ野球部の中では許されているのか

 現代野球の考え方で高校生が取り組むべき野球の姿を真面目に模索するならば、トーナメント制よりはシーズン(年)ごとのポイント制にして、全国大会は年1回に各ブロックごとのグループリーグから始めるぐらいでないと、野球としてもたないんじゃないだろうか、と。要するに、春と夏の大会がそれぞれ別々の大手新聞社で主催していて、高校生をダシに商売をしているといわれても仕方がないぐらい酷い状況にあるんじゃないのかなと酷暑の甲子園中継を観ていて毎年感じるところはあります。だからこそ、メディアが大手を振って高校野球の現代化を訴えることができないんじゃないかとすら思います。

 先日、DeNAベイスターズの筒香嘉智さんが高校野球の問題について記者会見までやっていましたけれども、大手新聞社ではこの問題について自分のビジネスのところだけ触れないでいたというのは凄く気になったんですよね。これが、自衛隊の中で隊員が過酷な訓練で怪我をしました、体罰がありましたとなれば、メディア的には大騒ぎするはずなのですが、なぜ野球部の中では許されているのか不思議です。

記者会見で少年野球、高校野球の「勝利至上主義」に疑義を唱えた筒香嘉智 ©文藝春秋

 そして、高校野球の過密な日程と理不尽なソサエティのおかげで、野球をやりたいと思っている子どもの数が増えないという悩みもよく聞きます。野球人口のすそ野が細っているのは、リトルリーグなど小学生が取り組む野球のところから、人生を彩り豊かにするためにプレイするはずの高校野球などの部活動にまで、大人の事情ががんじがらめになり過ぎて、辛い思いをしている若き選手たちが多すぎるからなのではないかとすら感じます。

 私自身も子どもの親として、そういう故障してでも選手として最後まで頑張れ、という文化が根付いてしまっているスポーツには、あまり子どもを安心して預けられないわなあという気持ちも持つ一方、野球であれ他のスポーツであれ子どもが「やりたい」というのであればやらせてあげたいんですよね。

 そんなわけで、46歳の私はいまパワフルプロ野球をやっています。

(※お断り 本件記事は、筆者個人の意見です。所属する団体、組織の見解を代弁するものではありません。)

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