「いいところ触ってる感じがする、質問が!」
矢沢永吉のインタビューVTRを見たザキヤマこと山崎弘也がそう感想を漏らすとおり、『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日)でのインタビューは、これまで彼が語ったことがあまりない“ミュージシャン・矢沢永吉”の核心に迫るものだった。
『関ジャム』は、毎回様々なアーティストや専門家を招き、専門的な部分にまで切り込んでいく音楽バラエティ番組。テレビではとかく「誰にでもわかりやすく」が優先され、敬遠されがちなマニアックな知識も、ホストとして関ジャニ∞の面々が好奇心いっぱいに素直に質問していくため、噛み砕いて解説され、自然と頭に入ってくる。マニアックな知識を関ジャニ∞を通すことでポップな形に変換している番組だ。
この日は矢沢永吉の名曲ベスト10を紹介しながら、矢沢のニューアルバムに作詞で参加した、いしわたり淳治、音楽プロデューサーの多保孝一や本間昭光、矢沢を敬愛し、20年来の交流があるHi-STANDARDの横山健といった専門家がそれらの曲について解説していく。たとえば「YES MY LOVE」と「いつの日か」は、歌いだしの2つ目のコードがオーギュメントコードになっており、独特な都会的哀愁感を醸し出しているとか、「黒く塗りつぶせ」のイントロとBメロでなっているリフ(繰り返すギターのフレーズ)が印象的だ、という具合に。音楽的知識がないものにとっては出てくる単語すらわからない。けれど解説されながら聴くと、確かに! と思うのだ。
そしてそれを矢沢本人に質問でぶつける。「オーギュメント、それって美味いの?」と言いそうと横山が言うように“感性の人”のイメージがある矢沢だが、「引っ掛かりのある和音を……」と尋ね始めると、遮るように「おっしゃる通り!」と嬉しそうに語り出し「入れなきゃダメ。アレンジやるとき、僕らが必ず話すのは『ちょっと、フックな何かがほしい』。それが合言葉。キャッチーなものが一発ほしい」と饒舌に答える。リフについてや、キーボードを多用する理由など本人も「話したことがない」という専門的な話や音楽界の現状を真摯に語っている矢沢はとても新鮮だ。
矢沢永吉のインタビューは人間性に焦点を当てたインタビューがほとんどだ。彼の人間的な魅力があまりに特異なので致し方ないことだろう。だが、音楽的なことを話す彼は、口調や仕草こそ僕たちのイメージ通りの“YAZAWA”だが、話している内容はスマートでインテリジェンスに溢れ、考え方も柔軟。人間性から離れ、専門的な部分を深く掘り下げて訊くことで、逆に今まであまり出てこなかった部分の人間性をあぶり出していた。
INFORMATION
『関ジャム 完全燃SHOW』
テレビ朝日系 日 23:10~
https://www.tv-asahi.co.jp/kanjam/