9月9日、曺国前青瓦台(大統領府)民情首席秘書官が法務省長官(以下、法相)に強行任命された。
韓国では、来年4月の総選挙、さらには2022年5月の大統領選挙を見据えた動きがにわかに騒がしくなってきた。
曺国法相が投資ファンドや子女の入学を巡る疑惑で物議を醸していたことは周知のとおり。6日には国会の人事聴聞会が開かれ、深夜まで続くさなか、曺夫人が私文書偽造で在宅起訴となった。ボランティア活動をしたとして、曺国法相の娘に送られた東洋大学の総長表彰状が、曺夫人の偽造によるものだという疑いが浮上していた。曺夫人は同大学の教授だ。
夫人が起訴される中、それでも、文在寅大統領は曺国前秘書官の法相任命に踏み切った。文大統領は任命した理由について、「疑惑があるからといって任命しなければ悪い先例となる」とし、「大統領選挙時に権力機関の改革をもっとも重要な公約のひとつとし、その公約は国民から支持された」、そして、「私を補佐し、権力機関の改革のために邁進し成果をみせてくれた曺国長官にその仕上げを任せようという抜擢理由を明らかにしたこともある。その意思が頓挫してはならないと思う」などという内容の国民向け談話を出した。
文大統領の唯一の"殉葬組"
中道派の記者は言う。
「疑惑に包まれてはいても、任命されるだろうというのが大方の見方でした。曺国法相は文大統領の唯一の『スンジャンジョ(殉葬組)』ともいわれ、10日の国務会議に間に合わせるはずというのも想定通りで、やはりその前の任命となりました」
余談だが、「殉葬組」とは最後まで共に進む盟友の意味合いで使われる。数々の疑惑の真相についてはソウル地方検察特捜部の捜査結果を待つほかないので、ここでは触れない。
8月9日に法相候補者として指名されてから、ほぼひと月。韓国はそれこそ曺国一色だった。「進歩派のアイコン」といわれた曺国法相を取り巻く疑惑は、進歩派には打撃になるかに見られた。学生たちの任命反対デモは続き、文大統領の支持率もひと月で5ポイント下落している。
しかし、意外な調査結果も出ている。