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 これにより与党「共に民主党」から次期大統領候補として名前が挙がっていた2人の名前が消えたことになる。進歩派は、今後20年の政権執権を謳っており、「進歩派内では、進歩派が結束できる候補は曺国しかいないと考えている」(前述、中道派記者)。先述の世論調査の結果を見ると、与党「共に民主党」内の支持率では李洛淵国務総理は39%で、次が曺国法相の12%となっている。

曺国強行任命が、野党団結の契機になる?

 対して、野党は曺国前秘書官の法相強行任命を受けて、反発を強めている。

 任命された同日、自由韓国党は「任命撤回」を要求するデモを行い、野党陣営の団結を求めた。しかし、と保守系の韓国紙記者は言う。

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「保守はいまだに分裂したままで、今後どうやって手を取っていくかが、まだ課題とされている。ただ、曺国を強行任命したことにより団結するための名分ができた。これからでしょう。与党に勝つためには野党がひとつにまとまらないといけない」

 世論調査関係者はこう見立てる。

「これだけ曺国法相の任命を巡り世論が揺れていますが、もし、今、総選挙をすれば、野党は惨敗するでしょう。それだけ、野党の力は弱い。ただ、中道層の与党支持からの離脱が明らかになってくると見ている」

 こうした混乱の中、現在、米国にいるとされる安哲秀前議員(「正しい未来党」所属)が韓国に帰国する可能性も取り沙汰された。

 10日の世論調査(リアルメーター)では、曺国前秘書官の法相任命に反対な人は49.6 %、賛成は46.6%と拮抗していたが、韓国は今週12日から旧盆の4連休で、本格的に世論が動くのはその後といわれている。

曺国が徴用工問題について放ったひと言

 ところで、曺国法相の人事聴聞会で気になるひとコマがあった。朴智元議員(無所属)から徴用工問題の解決についての質問が飛んだ時のこと。曺国法相は一個人の見解としてこう答弁した。

人事聴聞会での曺国氏 ©ロイター/アフロ

「(強制徴用工の)大法院(最高裁判所)の判決の趣旨を尊重しながらもどんな案で外交交渉をするのかは、過去、文在寅政府が提案した1+1(日本企業+韓国企業)案、このようなさまざまな折衷案があると考えます。(中略)私は1+1を基本にして次にαを何で行うのか、そのスタイルが(韓国)政府が負担する場合にもどんなスタイルなのか、どんなかたちなのか、が残っているように思います」

 すでにこの案については韓国側が日本に伝えたと報道されているし、個人的意見と断ってもいるが、もっとも文大統領に近い人物の再びのこの発言は重いのではないか。

 来年4月の総選挙まで韓国の政局は混乱すると見られ、対日路線もこのままの強硬路線は変わらないともいわれる。しかし、年末、徴用工問題で差し押さえられている日本企業の資産が現金化される前に、日本も韓国との対話へ動くべき時が来ているのではないだろうか。