看取り士とは、人生の最期を迎える人やその家族に、寄り添いながら看取りを手伝う職業で、日本看取り士会が設けた認定資格だ。榎木孝明さん主演の映画『みとりし』は、彼らを通して、現代社会の死を見つめている。

「8割強の人が病院で亡くなる時代といわれていますが、死んでしまうと霊安室、葬儀場と、どんどん流れ作業が始まってしまう。この、家族の悲しみが置き去りの状況は一体何だろうと考えていたんです。看取り士という仕事を知ったのはそういう時期でした」

 榎木さんが演じるのは、娘を交通事故で失った、定年前の会社員・柴久生(しばひさお)。心身をすり減らした柴は、看取り士と出会い、自身も看取り士として人の死を支えることになる。

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© 2019「みとりし」製作委員会

「大きく経済発展を遂げた戦後社会は、人の死までも他人がサービスとして請け負うことを当たり前にしてしまいました。その“常識”は正しいのか。死の在り方への考えが、看取り士という仕事が生まれるきっかけになったようです」

 死の床に就き、彼岸へと旅立つその場で寄りそう。死を受け入れ、静かに見送るのだ。

 榎木さんは、本作の主人公でありながら控え目に佇む。家族の領域に踏み込まず、分をわきまえることが看取り士の矜持と考えたのだ。

「肉体の死で終わりではなく、まだそこにある魂を、残った者が引き継ぐ。その時間にも立ち会うのです。決して自分が前に出るのではなく、そこにいることが一番求められている、そう思いました」

INFORMATION

映画『みとりし』
9月13日より有楽町スバル座ほか全国順次公開
http://is-field.com/mitori-movie/index.html