「ネット住民も呆れた 安倍の『ポエム演説』」(日刊ゲンダイ9月9日付)という記事があった。

「ウラジーミル。君と僕は、同じ未来を見ている。行きましょう。ロシアの若人のために。そして、日本の未来を担う人々のために。ゴールまで、ウラジーミル、2人の力で、駆けて、駆け、駆け抜けようではありませんか。」

 安倍首相のウラジオストクでの東方経済フォーラム演説(5日)に対し「これってポエムだろう」とネット住民が呆れ果てている、とゲンダイ。しかしよく読んでみると、

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《ほとんど“青年の主張”のような演説で、領土返還を迫る“迫力”はどこにもなかった。》

東方経済フォーラム全体会合で演説する安倍晋三首相 ©時事通信社

 負けずに呆れていたのはゲンダイだった。もっと強い反応をしたのは産経だ。

 プーチン大統領があてつけのように「北方領土・色丹島での水産加工工場稼働を祝う式典に、中継映像で参加」したことを取り上げ、

《安倍首相はプーチン大統領と親しいというが、会談を重ねた結果がこの仕打ちである。》

《さっさと帰国した方がよかった。》※社説「日露首脳会談 どうして席に着いたのか」9月6日

 ゲンダイ師匠が呆れ、産経師匠が激おこぷんぷんだった対ロシア外交。

読売「検証 安倍外交」が興味深い

 実は今回の首脳会談の前に「検証 安倍外交」という短期連載が読売新聞で書かれていた(全7回)。これが非常に面白かったのだ。

 第1回は安倍外交の特徴の一つ、「トップ外交」について(8月28日)。

 読売は基本的に評価しているのだが記事の後半に、

《トップ外交には、意思決定までのプロセスが見えにくくなる傾向があり、国会や国民への説明が十分とは言えない場合もある。》

 北方領土「4島返還」からいつの間にか「2島引き渡し」になったことに触れている。

柔道観戦する日ロ首脳 ©時事通信社

 さらに興味深いのは「検証 安倍外交」第3回(8月30日)だった。

 安倍外交は「側近が大きな影響力を持っているのも特徴」とし、中国やロシアとの「協力」へ転換を主導したのは元経済産業官僚の今井尚哉首相秘書官であると書く(「秘書官進言『常識』破る」8月30日)。

 その側近外交には外務省が不満を持っているらしい。

《外務省には、「(今井氏による)官邸からの指示は、相手国の言い分を聞き入れたようなものばかりだ」との不満もくすぶる。》

 実は読売は前日にすでに「外務省外し」と書いていた。日韓関係についてだ。

《外務省の首相に対する影響力の低下も指摘される。今回の輸出管理厳格化について、外務省で日韓関係を担当するアジア大洋州局は相談を受けなかった。》(8月29日)