阪急梅田駅1日50万人 vs. 阪急中津駅1万人

 そうした阪急の中津駅、その隣を国道176号線が通っている。こちらも高架で阪急のホームと同じ高さにあって、つまりは国道と阪急の線路が横並びなのだ。さすがの国道176号、ビュンビュンとクルマが通り、阪急の線路もマルーン色の電車が盛んに走る。国道と並んでいるのにわざわざ一度高架下まで降りて改札を通らなければならないのは少し不便に感じるが、各駅停車しか停まらない駅だから仕方ない。乗降人員は1日1万人を少し超えるくらいで、梅田駅の50万人超と比べると中津駅の立場は御堂筋線と同じくあまり強くないようだ。

阪急京都線には中津駅がなく、「河原町行き」が通過していく
国道176号線からと同じ高さにある阪急中津駅のホーム

 さて、その中津駅の狭いホームから国道側を眺めると、その先には件のJRの梅田貨物線が伸びていて、その先には梅田の高層ビル群が見える。高層ビル群の手前には広大な空き地もあるが、これは2013年に廃止された梅田貨物駅の跡地。とうぜん一等地の中の一等地で、“うめきた地区”として絶賛再開発中である。きっと、もう数年もすれば巨大なビルが建つであろう。現在新大阪駅まで到達しているおおさか東線が延伸し、梅田貨物駅跡地あたりに北梅田駅が設けられる予定もあるという。今はさみしげな阪急の中津駅は、そうした梅田の変貌をつぶさに見ることができる駅なのだ。

現在開発中の“うめきた地区”

 そう考えれば、御堂筋線中津駅から阪急中津駅への小さな旅も、なかなかに興味深い。大ターミナルの隣にあるがゆえに存在感が薄く、時には“厄介者”扱いもされてしまうようなふたつの中津駅。だが、そこにも時代を見つめてきたドラマがあるということか。大阪・キタを訪れたなら、ちょっとだけ足を伸ばしてみてもよさそうだ。梅田駅を起点にくるりと一周しても1時間足らず、である。

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写真=鼠入昌史

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