東京オリンピック代表内定の切符は、わずか5秒の差で届かなかった。しかし大迫傑は、どこかすっきりとした表情でメディアの待つミックスゾーン(取材エリア)へ姿を現した。
「トレーニングはしっかりとできていたので、自信はありましたけど、最後は正直なところ力負けです。それを真摯に受け止めて、今後しっかりとやっていきたい」
どれほど落ち込んでいるのだろう。そんな心配をよそに大迫は、淡々と、ときに記者の目を正面から見つめながら、自らの敗因を語った。
「設楽選手が(先頭に)出るのは予想していましたし、もう1人選手が続くようならついていこうと思っていました。でも、設楽選手だけだったので、ついてくことはしませんでした。結果的に追いつきましたし、そこは想定内でしたが、それでも前半はちょっと心の中で焦りがあったんだと今は思っています。ラスト1000mぐらいから仕掛けられたらいいなと考えていんですけど、中村選手がスパートをかけた時はもういっぱいいっぱいでした。もう少しあそこでついて行ければよかったんですが、前半の気持ちの余裕が最後の5kmに出るのがマラソンだなと改めて感じました」
設楽悠太の飛び出しに大本命の大迫は……
スタート前、四強と言われていたのは、日本記録保持者の大迫傑(NIKE)、前日本記録保持者の設楽悠太(ホンダ)、アジア大会金メダリストの井上大仁(MHPS)、福岡国際マラソンで14年ぶりの日本人優勝を果たした服部勇馬(トヨタ自動車)。その大本命と目されていたのが大迫だった。
スタート直後、設楽が飛び出し、一時は後続に2分以上の差をつける独走を見せたが、35km付近から失速。37km過ぎで2位集団に捉えられると、記者たちの間からは大きなどよめきが起きた。その後は集団を引っ張る選手が目まぐるしく変わり、中村匠吾(富士通)、服部、大迫による三つ巴の戦いになると、息をもつかさぬ展開に、記者たちの誰もがモニターに釘付けになった――。