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MGC3位・大迫傑が語った“敗因”「前半の気持ちの余裕が最後の5キロに出る」

2019/09/16
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大迫が初めて悩みを明かしたあの日

 今年3月3日に行われた東京マラソン。異常な寒さに襲われたレースで、大迫は30km過ぎで棄権を選択した。その3カ月後の6月、自身初の著書である「走って、悩んで、見つけたこと」の打ち合わせの席で、彼はずっと棄権をしたことは自分の弱さではないかと悩んでいたことを明かしたのだ。

「あれは合理的な判断だったのか、それとも僕が弱かったのか、ついていく力がなかったのではないかと悩んだんです。でもコーチとも話をして、色々なことがあったなかで妥協なく練習を積めたことや、スタートラインに立つまでの努力をしてきたことを自覚して、頑張ったんだということを認めざるを得なかったんです」

スタート直後の大迫 ©杉山拓也/文藝春秋

 これまで確固たる信念や思いを語っていた彼が、初めて見せた弱さだった。それと同時に「今はしっかりと練習ができて、いい状態で走れています。結局ハードな練習を積み重ねることでしか、自信は戻ってこないんです」と晴れやかな顔で語っていた。

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 東京マラソンから6カ月。悩んだ時期を乗り越え、自らを追いこみ、ハードな練習を積み重ねてきたであろうことは、レース前に彫刻のように鍛え上げられた体を見て感じていた。実際、レースでも大迫は好走を見せた。ラスト勝負なら勝てる、そう思う人も少なくなかった。だがわずかに及ばなかった。

 
ゴール直後の大迫 ©杉山拓也/文藝春秋