国は「大盤振る舞い」を実施しているが……
今回も同様に経過措置は実施されている。10月の税率アップに備えて今年3月末までの契約物件については旧税率の8%が適用された。それでは2019年3月の状況をみてみよう。
同じく首都圏の供給戸数は3337戸。対前年同月比で7.7%の減少。契約率も72.2%で前年同月比2.5ポイントの減少である。13年9月とは対照的な結果である。
前回の駆け込み需要では、翌年に反動減が起こり、供給戸数が20%も減少して年間供給戸数が5万戸を割る状況に陥った教訓から、今回国は、一定の激変緩和措置を設定した。具体的には、消費税率引き上げ後は両親や祖父母からの無税の贈与枠を700万円から2500万円に、省エネ住宅では最大で3000万円まで広げる「大盤振る舞い」を実施した。また、住宅ローン控除を毎年最大40万円で10年間認めていたものを、3年延長して13年とした。
贈与枠の拡大は各家庭のお財布事情もあるので効果は限定的だが、ローン控除は40万円の3か月分120万円が「お得」になる。仮に6000万円のマンションを購入した場合、建物比率を70%とすると4200万円に対する消費税率の2%アップ分は84万円。差し引きで36万円得という計算になる。
首都圏では新築マンションよりも中古住宅のほうが売れている
こうした激変緩和措置が好感されて駆け込み需要が起こらなかった、と考えたいところだが、経過措置が過ぎた19年4月以降も新築マンション販売状況は惨憺たるものだ。19年4月の供給戸数は1421戸、対前年同月比で39.3%もの減少、契約率も64.3%。タワーマンション供給はわずかに130戸という寂しい内容に終わった。このままでは今年の年間供給戸数は昨年より大幅に減少して3万5000戸を切るのではないかという声も聞かれ始めた。
では顧客の間で住宅購入に関する興味が失われているのかといえば実はそうではない。東日本流通機構の調査によれば、19年上半期の首都圏における中古住宅の成約件数は1万9947件、対前年同期比で3.8%増となったが、この数値は90年5月に同機構が調査を開始して以来の過去最高値となっている。新築マンションの供給戸数が同時期で1万3436戸、契約率66.5%だから、もはや首都圏では新築マンションよりも中古住宅のほうがよく売れているという現象になっていることがわかる。