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 以来、沙也加は精力的に仕事をこなし、とりわけミュージカル女優として著しい成長を遂げる。昨年2月に刊行した著書ではこんなことを語っていた。

《私には一つだけ欲しいものがあって、それは演劇界での何かの賞。それを取れたら「よくできました印」が[引用者注:自分の]選んだ道筋に押される気がするんです。誰にも強制されず何の影響下にもおかれない、自分で探したジャンルだから、そこで評価されたら「これで良かったんだよ」って証明が自分にも周りにもできる気がして。それが今一番欲しいものですね》(※1)

 この直後、彼女は菊田一夫演劇賞を受賞する。それは、前年の2017年に出演したミュージカル『キューティ・ブロンド』の主人公、エル・ウッズの演技が評価されてのことだった。同作の稽古中、彼女が演出の上田一豪に《なぜ私を?》と訊ねたところ、《僕はこの作品を神田沙也加の当たり役にして、神田沙也加のキャリアの中でも代表作にしようと思っています》との答えが返ってきたという(※4)。その言葉どおり、沙也加は同作で大きな賞を手にし、今年2月から3月にかけて再演も実現した。昨年には、ミュージカルの不朽の名作『マイ・フェア・レディ』で、恩人・大地真央の当たり役でもあった主人公のイライザを初めて演じている。来月22日には日本語吹替版で再びアナ役を演じた『アナと雪の女王2』の公開も控える。

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©AFLO

母が選んだ道を歩む?

 仕事での活躍の一方、私生活では2017年、俳優の村田充と結婚した。先述の著書のなかでは、《女性としてのプライベートとお仕事の良い配分を知りたくて、いろんな職業、年齢の方にお話を聞いているところ。どこかで勇気を持って仕事をストップして、親になるっていう経験を私はしたいから。その目標に向かって、自分の中でベストのタイミングを探し中です》とも語っている(※1)。思えば、1980年代、山口百恵をはじめ結婚を機に引退する女性歌手が目立つなかで、当時トップアイドルであった松田聖子が結婚・出産後も子育てをしながら芸能活動を継続したことは注目を集めた。母がかつて選んだ道を、娘の沙也加も自分なりのスタイルを模索しながらまた歩もうとしているのが興味深い。

※1 神田沙也加『Saya Little Player』(マガジンハウス、2018年)
※2 『婦人公論』2014年7月22日号
※3 『婦人公論』2006年9月22日号
※4 「SPICE」2019年2月13日配信