東京・池袋のサンシャイン水族館で11月4日(月)まで開催中の「性いっぱい展」。生き物の“性活動”にフォーカスしたまさかの特別展で、“おさわりBOX”を始めとする体感型コンテンツも多数用意されている。これまで「もうどく展」や「へんないきもの展」など、人気の特別展をいくつも企画してきたサンシャイン水族館が、「性」をテーマにするのは初めてのこと。そこで、同水族館で飼育を担当している先山広輝氏に、今回展示されている生物を中心に「“性”の魅力」について語ってもらった。

(取材・構成=文春オンライン編集部)

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 生き物の“性”のあり方は実に多様で、なかでも「どのように受精するか」に注目してみてみると、「えー!」と言いたくなるような生物がたくさんいます。たとえば、私たち人間には生殖器があり、“挿入”して受精する、というパターンをとっています。しかし、アオリイカをはじめとしたイカの仲間には、そうした交接器はありません。

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「性いっぱい展」の営業時間は18時半から22時。“夜間特別営業”になっている

イカのメスは“精子の槍”に刺されて受精する

 ではどのように子どもを作るのかというと、オスがメスに精莢(せいきょう)と呼ばれる、精子が入ったカプセルを手渡すのです。刺激を受けた精莢からは、自動で“精子の槍”が飛び出すので、それを受け取ったメスは精子に刺されて受精する……という仕組みです。精子の先端は矢じり状になっていて、一度刺さるとなかなか抜けない作りになっています。

 ただ、この精莢の受け渡しをどんな“テンション”で行うかは、イカの種類によって全く異なります。たとえばアオリイカは結構ドライで、精巣から取り出した精莢をそのまま手渡して交接終了……となる、実に淡白な部類です。それとは対照的に、コウイカはオスとメスが口をガッとくっつけて、熱烈なキスをするように精莢を渡します。

コウイカは“熱烈なキス”をしながら交接する 

 コウイカの仲間は器用に身体の色を変えることができるので、交接の手前の段階でも、オスはメスに対して激しいアピールを行います。