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クマノミが性転換する仕組みとは?

 一方で、オスとメスが入れ替わる、いわゆる“性転換系”の魚もいます。オスからメスになる魚も、メスからオスになる魚も、さらにはオスとメスを行き来する魚もいますが、たとえばオス→メスのパターンで有名なのがクマノミです。

 これは卵と精子の“製造”に関係しています。精子は製造コストが低いので、身体が小さくてもたくさん作ることができます。しかし、これは裏を返せば、身体が大きな個体が精子を作ると過剰に作りすぎてしまう、ということにもなります。

クマノミの一種「ハナビラクマノミ」。手前がオスで奥がメス 

 反対に、卵を作るには栄養を含め結構なコストがかかるので、当然大きな個体のほうが有利です。こうした事情から、身体の大きなクマノミはメスになるのです。性転換ができる魚は雌雄同体で、元々オスの能力もメスの能力も持っています。そのときの状況に合わせてホルモンバランスを調整することで、性転換を行うのです。

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“性”の仕組みには進化の歴史が詰まっている

 こうした独特な“性”の仕組みは、何千年、何万年とかけた進化と生き残りの中で洗練されてきたものです。人間の目からは「ちょっと変だな……」と思えるようなものでも、実はその生物の生息環境からすれば、非常に合理的な手法であることが多いのです。

クラゲもなんだかムーディ

 まさにそこがたまらなく面白いところなのですが、こうした話を水槽横の短い紹介文で説明することは難しく、また、“性”の話はちょっと前面に押し出しづらいテーマでもあります。その点でも、今回の「性いっぱい展」が生き物の不思議さと面白さを知る、一つのきっかけになってくれればと思います。