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「求められたことはすべてやる」 元ヤクルト・今浪隆博が引退後に決めたこと

文春野球コラム クライマックス・シリーズ2019

2019/10/09
note

「やるか、やらないか?」ではなく、「やる!」

 なおも今浪は続ける。

「……ランナーを見ると、間一髪でアウトのタイミング。ここで、セカンドに投げてアウトにすればスーパープレーです。でも、セーフになるとただの判断ミスです。そういうときに、僕はミスすることを非常に恐れるタイプでした。無難に、無難に。こういうケースだと、自分の場合は必ずファーストに投げる。勝負ができないタイプだったんです。メンタルの勉強をしていく中で、改めて自分の性格がわかったんです」

 自分の弱点に気づいたからこそ、今浪は冒頭に掲げたマイルールを作った。マイルールがなければ、コラムの依頼があっても、「自分には無理だ」という、本来の性格である「慎重派の自分」が頭をもたげていたことだろう。

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「でも、マイルールがある以上、“やるか、やらないか?”ではないんです。誰かを傷つけたり、反社会的なことならともかく、そうでないことでタイミングが合うのなら、“やります”しかないんです。そうすると、すごいラクなんです」

「“やります”しかないんです」 ©長谷川晶一

 今浪の話は、常に力強かった。未知なる世界に足を踏み入れることに何のためらいもないような強さにあふれていた。もちろん、内心ではビクビクしたり、恐れを抱いたりすることもあるのだろう。不安で眠れない夜もあるのかもしれない。けれども、彼の口から飛び出すのは、新しい世界に順応して、「自分を求める人に少しでも喜んでもらいたい」という思いが強く感じられる発言ばかりだった。

「今はとても順調ですね。着実に進んでいるし、日々、自分自身が成長している実感を感じていますから。メンタル面に不安を抱えているスポーツ選手に対して、何を伝えられるか? どのように結果を出してもらうか? 今後はアマもプロも問わずにやっていくつもりです。今はまだ単発契約が多いんですが、ゆくゆくは年間契約など長期的にサポートできるようになればいいですね」

 そこには、決死の覚悟を抱いた悲壮感は微塵もない。軽やかさと爽やかさ。今浪の最大の武器はそこにある。第二の人生は始まったばかりだ。彼の挑戦は続く。その先にあるのは輝かしい未来だ。明確に説明することはできないけれど、力あふれる今浪の言葉を聞いていると、なぜだかそんな気がしてならないのだ。

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