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元ベイスターズ・須田幸太が語る「“勝ちきれない”の正体」……木塚コーチが教えてくれた大切なこと

文春野球コラム クライマックス・シリーズ2019

2019/10/11
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長田さんに学んだ「ど真ん中まっすぐ投げろ」

 無意識で固くなって、いつもと同じことができなくなることはたくさんあります。ホールドがつくとか、先発の勝ちを消したくないとか、雑念は絶え間なく流れ込んでくる。16年は5勝3敗だったので、3回は先発の勝ちを消しています。でもなんとも思ってないです。いや、そう思わないと、中継ぎはつとまらない。そういうメンタルがないと、結果的にチームに迷惑をかけることになる。それは長田(秀一郎)さんに習ったところが大きいかもしれない。長田さんってめっちゃ優しそうにみえるでしょ。実際優しいんですけど、打たれた時ほど「気にしてないぞ」って態度なんですね。なんとも思ってないはずない。私たち中継ぎは夜中に突然「ああ……」って、何度もうなされるんです。だからこそ自分のメンタルを保つためのコントロールが必要で、長田さんはそれが出来ていた。普段のほほーんとしてる長田さんが試合になると「ど真ん中まっすぐ投げろ」っていう(笑)。

 でもそれって、指にかかってる感覚があるから。最後ど真ん中って、やぶれかぶれに聞こえるけど、実はちゃんと基本をやってる。いつもと違ったことをやろうとするから失敗するんですよね。三振とろうと思ってる時って、だいたい三振とれないです。やっぱり練習通りのことを試合でするしかない。

 16年は「迷ったらど真ん中投げろ」っていう長田さんと、「どんな時でも指にかかったボールを投げろ」という木塚コーチと、あのふたりに出会えたことが一番の運の良さだったと思います。

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長田さんと木塚コーチに出会えたことが一番の運の良さだったと思います。 ©文藝春秋

三嶋のことはいつも気がかりです

 元々先発で、そこから中継ぎに転向した私にとって、同じような道を歩んでる三嶋のことはいつも気がかりです。三嶋が打たれてたら自分も悔しいし、抑えたら嬉しい。三嶋も御多分にもれず我は強いですが、ちゃんと周りが見えていて、人に合わせるのもうまい。キャンプ中にLINEした時には「球はいってるし、体は元気です」と言ってたので、まぁ1年間は投げれるだろうなと思いましたが。ただ結果がついてこない時に、ちょっと打たれ始めるんじゃないかなって。どうしても数字を追いかけてしまうんです、プロ野球選手って。自分との勝負じゃなくて、数字との勝負になってしまうことが、私はありました。

 投げ過ぎって言われてるみたいですけど、三嶋、あいつは体が強いので、たぶん大丈夫だと思う。ただ今年三嶋はめちゃめちゃイニングまたいでたから……中継ぎは極力またぎたくないですよね。せっかくホールドつくのに、2イニング目打たれたらホールドつかなくなる。さらに中継ぎは2回連続で打たれたらファーム。先発が9イニングを2失点に抑えることを基準にすると、中継ぎは5回に1回しか失敗できないことになる。

 でも、先発時代は……ダメだったら、不安なまま1週間すごさなくてはならなかった。中継ぎは今日打たれても明日抑えればと切り替えられた。そういうところで、中継ぎは楽しかったですね。いつでもリベンジできる。やっぱり最後は……運じゃないかなぁと最近思うんです。入ったチームがどこで、何を任され、誰に出会うかによっても活躍できるできないは変わってくる。私は本当に運が良かったと思う。ベイスターズというチームが大変な時に入団したけど、だからこそ今の自分があるって。

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