剥がせる何かがある気がしていた。オブラートに包む……いや、きっともうオブラートも知らないか、ゼリーと一緒につるんと薬を飲んだ世代だろうか。そんなことはどうでもいい。清宮選手の「きちん」とした姿に私はずっと「包まなくてもいいのに」と思ってきた。
次から次へと訪れる波を乗り越える2年
オフになるのが早いと早いなりに起こることもある。選手の体のメンテナンスもそのひとつ。10月7日からのフェニックス・リーグに参加する予定だった清宮選手が手術をするという。古傷の右肘、リハビリは3か月、今なら春のキャンプに間に合う。
木田GM補佐(当時)が左手でくじを引き当てたあのドラフトからもうすぐ2年。清宮選手が21番をつけてからの2年は、次から次へと訪れる波を乗り越える2年でもあった。
1年目は、
1月 新人合同自主トレ中に右手親指付け根骨挫傷
2月 キャンプ後半に急性胃腸炎で点滴治療
3月 腹膜炎で入院
7月 右肘炎症で離脱
11月 秋季キャンプ中に右手首の違和感
2年目の今年は、
3月 右手首有鉤骨骨折、骨片摘出手術
10月 右肘関節形成術
こう並べてみると入団2年でこれだけのことが起こる選手はなかなかいないなと改めて感じる。越えられない試練は神様は与えないというけれど、神様、ちょっとこれは多すぎます。注目度の違う彼はこのひとつひとつにコメントを求められて、復帰すればすぐの活躍が期待される。打撃は好調であることが当たり前で、不調になればそれはそれで大きく取り上げられる。代打を送られるちょっとした場面だってファンの記憶には焼きついてしまう。
例えば、7月31日の札幌ドームのイーグルス戦。7回2アウト2塁の場面で清宮選手の代打に立ったのは7年先輩の谷口選手だった。目の前でのタイムリー2ベース、結局それが決勝打となる。札幌ドームは割れんばかりの大歓声だった。谷口選手は2塁で珍しくガッツポーズをした。それを受けてベンチも大盛り上がりだった。
私は代打を送られた清宮選手の姿を探した。彼は座ったままひとり表情を硬くしていた。ひとつも笑わなかった。あの時。私は、ああ、この顔が見たかったのかもしれないなと思った。清宮選手がこれだけ試合の中で悔しさを出すのは初めてのような気がしていた。