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「入院中もずっと電話」 ライオンズ・岡田雅利と森友哉、2人の捕手の深まる絆

文春野球コラム クライマックス・シリーズ2019

2019/10/12
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ビールかけは「良い思いと、悔しい思いと、2つあった」

 9月24日、優勝の歓喜に沸くビールかけの中に、楽しそうにはしゃぐ岡田選手の姿があった。実は、12日の会話の中で、ビールかけの話にもなった。その際、「行きたい気持ちもあるけど、でも、自分は一緒に戦えていないのにと思ってしまうやろうからなぁ……」と、複雑は心境を口にしてもいた。なので、気持ち良さそうにチームメイトたちからかけられたビールを浴びる笑顔を見て、「やはり、参加して良かったと思っているんじゃないかな」と思った。

 後日、改めて尋ねてみると、「ビールかけ自体は、良い思いと、悔しい思いと、2つあった」が答えだった。

「今年も、前半だけやけど、去年からの上積みはできたというある程度の自信はあります。自分の中で発見できることが今年は多かった。特に、怪我をしてからは、今までなかなかなかった、テレビで試合を見るということも経験して、これまでとは違った、色々な視野で見られるようになったことは大きかった。苦労も悔しい思いもしたけど、すごい勉強になったシーズンでした」。リーグ優勝は長丁場だ。その中で、「貢献できたところはあった」という自負があるからこそ、美酒の味を素直に堪能できた。その一方で、「やっぱり、そこに(戦力として)おられへんかったという思いはある」のも正直なところ。加えて、最高の仲間たちと喜びを爆発させる至福を味わったからこそ感じた一抹の寂しさもあった。「これはみんなが思っていると思うんやけど、日本一になってこそ、真の優勝。ここからまた、『日本一になる』という強い思いがある中で、そこで一緒にベンチにおったり、何が1つ仕事ができたり、胴上げに立ち会えたりができないというのが悔しい」。

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 クライマックスシリーズ、勝ち進んだ際の日本シリーズは、静かに見守ると決めている。「これは僕の考えですが、短期決戦となると、雰囲気が一番大事。そこに、いくらチームメイトとはいえ、どんな形であれベンチメンバー以外が行って、雰囲気を変えてしまうのは良くないと思うので」。チームの空気を重んじ、身を引くことを選ぶあたりも、いかにもキャッチャーらしいと言えよう。

 ともに戦えない悔しさが一番であることはで言うまでもない。それでも、このクライマックスシリーズ、岡田選手の心は常にライオンズに寄り添っているに違いない。そして、その想いをしっかりと背負い、チームメイトたちも全力を尽くして戦っている。

 いなくなってなお、その存在感が増す。岡田選手の貢献度がいかに大きいか、感じずにはいられない。

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