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「来年はもう来たくない」 ファイターズ2015年のドラ1・上原健太投手の覚悟

文春野球コラム 日本シリーズ2019

2019/10/20
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2020年の秋の私たちは宙ぶらりんではない

 初の先発、最初に三振をとったものの、その後は連打を浴び初回に打者11人に対して8失点。スタンドから見ていた私からも上原投手の表情が緊張から焦りに変わっていくのがわかったし、スタンドにいたからこそ、その後に当時の吉井コーチがマウンドに行き失意の上原投手をベンチに半ば強制的に連れて帰る姿を俯瞰でしっかりと見ることになった。

 あの年はその後オープン戦で投げることもなく、シーズン終盤に一軍登板が1試合。2年目は先発が6試合あり、初勝利もあげた。そして無傷の4勝をあげた3年目の去年は初の開幕一軍、高校時代を過ごした広島ではホームランも放って自らの勝利に花を添えたり、勝ちは逃したが故郷・沖縄での凱旋登板もあった。すこしずつ階段を上ってきた、でも、今年は1勝止まりだった。そして、フェニックスへ。

「もう来年は来たくない」。この言葉をマスコミに漏らすことに改めての覚悟が感じられる。

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 来年は大卒5年目。もう2軍にいる姿や登録と抹消を繰り返されることに、ファンも手放しで「頑張って」とは言えなくなってくるキャリアだ。今年のドラフト1位はサウスポー。社会人ナンバーワン左腕と言われるJFE西日本の河野竜生投手は即戦力として期待される。足踏みは少しだって許されなくなった。

 さ、来年のスケジュールを立てよう。予定だけれど、もう言い切ってしまおう。2020年の秋の私たちは宙ぶらりんではない。ファイターズは優勝し、CSを勝ち進み、きっと日本一になる。シーズン最後に見つめる先の輪の中には……絶対に上原投手の笑顔がある。そして私たちは泣くのだ。今年の分まで思う存分、嬉しい涙を流すのだ。CS、日本シリーズ、涙、全部見込んで、さ、スケジュールを立てよう。鬼のみなさん、どうぞ笑ってください。

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