大阪国税局出身の秋山清成税理士はこう話す。
「1次相続で配偶者がどれだけ相続すればもっとも有利になるかは、夫妻それぞれの財産と相続人の数、家族の状況によって異なり、百の家族があれば百通りある」
税理士の選任を正しく行わなければ間違える
問題は、税理士も時に間違えること。
父親か母親が亡くなった時、または夫や妻が亡くなった時、相続税の申告を依頼できる税理士の顔が浮かぶだろうか。
一生に1回か2回の相続では税理士の顔が浮かばないのは当然だが、それは税理士の側から見ても同じだ。
全国約7万8000人の税理士の多くは、定期的な収入が見込める法人税や所得税の申告が専門で、不定期の依頼しかない相続税の申告を柱にしている税理士は少ない。相続税申告の経験を積めない税理士は多いが、相続税の申告報酬は1件当たりでは法人税や所得税よりも高いため、経験がなくても申告を引き受ける税理士がいるという。
そして、しばしば間違える。上記に挙げた失敗例も税理士の提案だったものがある。
相続そして相続税の申告には、「落とし穴」が多い。相続制度をある程度理解し、税理士の選任を正しく行わなければ間違えるものなのだ。
「国税OBが教える『相続』」シリーズ第2弾(「文藝春秋」10月号に掲載)では、国税OBが体験した実例を紹介しながら相続の「落とし穴」をレポートした。
【文藝春秋 目次】<総力特集>日韓断絶 藤原正彦 佐藤 優/<特別寄稿>村上春樹 「至るところにある妄想」/<特集>がん医療の新常識
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2019年9月10日 発売
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