2016年が 「VR元年」と言われるほど一部で盛り上がっていたことをご存じだろうか? VRとは「バーチャル・リアリティ」(仮想現実)。第一次VRブームは平成元年。「今さらVR?」と思われる人も多いだろう。
ここで思い出すのが、かつての3Dブームだ。一時期はメーカー各社が、3D立体視に対応するテレビをこぞってリリースしたものの、今では話題にも上らなくなっている。
筆者も自分で初めて最新型のヘッドセット型モニターOculus Riftを体験するまでは、VRも一時的なブームだろうと捉えていた。だが一度体験してみると、これは単なるブームでは終わらないな、と思わされたのである。
米国大手投資銀行も「次はVRが来る!」と予言
実は、あのゴールドマン・サックスも「次はVRとAR(拡張現実)が来る」と予言しているのだ。ゴールドマン・サックスの投資調査部のレポートは、AR/VR市場が2025年には約950億ドル(10.8兆円)まで拡大し、PC・スマートフォンに続く第3のプラットフォームとして市場を形成する可能性があると予測している。
そもそもVRとは、人工的に作り出された仮想の空間を、あたかも現実のように感じさせる技術。
テレビが、その“枠”の中にある映像が観られるだけなのと違い、VRの場合は、右を向けば右に広がる景色が観られ、上を見上げれば天井や空が広がっている。現実では当然出来ることをVRで可能にしたことで、今居る場所とは違う“ある空間”に、自分がまるで“居る”かのような錯覚を起こさせるのだ。
VR上に落ちているものを掴んで投げると壁が傷つく
そんなVRの、消費者向けとしては先駆的なモデルがOculus Riftだ。パソコンと連係させたヘッドセット型のモニターを頭に装着すれば、VRが気軽に楽しめる。さらに、同機にはOculus Touchという、手に装着するデバイスが別売りで用意されている。このOculus Touchを手にすると、手や指の動きをVR上に再現できるようになる。例えば、VR上に落ちている物を掴んで投げると、物が壁に当たって壁が傷ついたりする。
VRのヘッドセットだけを使っていた時は、ユーザーは、その世界を傍観しているだけだった。それがOculus Touchを使うと、自分の動作が、その世界に影響を与えられる。動作の結果が“ある世界”に反映されることで、単なる傍観者ではなく、より“居る”または“実在する”という感覚が高まるのだ。
VRを体験するためのお薦めデバイス
VRを体験するための製品は、昨年さまざまなモデルが発売された。Oculus RiftのようにPCと連係して使うもの、PlayStation 4用のPlayStation VR、そしてスマートフォン、特にサムスンのスマートフォン、Galaxyシリーズを装着させて使うGear VRなどだ。
クオリティの高いコンテンツを楽しみたいのなら、Oculus RiftやPlayStation VRがお薦め。特にOculus Riftについては、ハードウェアとしてのクオリティが高いだけでなく、楽しめるコンテンツも多い。
ただし、いずれもVR本体以外に、ハイスペックなPCやPlayStation 4が必要になる。
もっと気軽にVR体験をしたいのなら、スマートフォンをゴーグルに装着する簡易型のVRデバイスがよいだろう。数が多いだけに、選ぶのが難しいところだが、現時点でお薦めできるのは、Gear VR。技術開発に、前出のOculus Riftのオキュラス社が関わっているモデルだ。スマートフォンのサムスン Galaxyシリーズが必要になるが、同ユーザーであれば迷わず「Gear VR」を選ぶべき。
視覚聴覚だけでなく、触覚も
VR機器や対応コンテンツの開発は、まだ端緒についたばかり。現在は主に、視覚と聴覚によって実在感を高めている。だが今後は、バーチャル空間上の物に触れた時の感覚、触覚に関する技術も進化していくはずだ。
またコンテンツも、現在はゲームや環境映像、音楽などが中心だが、新たなジャンルのコンテンツが生み出されていくだろう。まず考えられるのが、ソーシャル機能を強力に組み込んでいくことだ。離れた場所にいる友だちと一緒に映画を楽しむ、というコンセプトは、動画ストリーミングサービスのHuluが既に始めている。PlayStation VRでも、複数人のゲームプレイが可能だ。
また、VRが普及すれば、打合せや会議などもVR空間上で行われるようになってもおかしくない。今あるテレビ電話などよりも実在感の高いVRであれば、より緊張感のある会議が行えるはずだ。小型・軽量化も進み、誰もがVRを気軽に楽しめる時代が来るだろう。
現在は黎明期ということもあり、各地でVR体験会が催されている。まずは、その凄さを体験してみるといいだろう。そこから新たなアイデアが生まれてくるかもしれない。