米国はトランプ大統領が5月に国賓で来日しており、大統領に続くペンス副大統領の参列は日本重視以外の何ものでもない。89年の「大喪の礼」のときはブッシュ大統領(父)が、翌年の「即位の礼」にはクエール副大統領が参列しており、これと同じパターンである。
韓国・文在寅大統領は誰を派遣するか?
さて、韓国はまだ誰を参列させるか発表してない。前の「即位の礼」には姜英勲首相を参列させている。すると順当なところでは李洛淵首相だが、文在寅大統領が昨今の日韓関係冷却化の中でどう判断するか次第だ。閣僚、もしくは韓日議連の姜昌一会長などとなれば大きな格落ちで、ほんの形だけの使節派遣ということになる。
「大喪の礼」のとき、こういうことがあった。ソ連(当時)は儀典上第2位ながら、日本では全く無名のルキヤノフ最高会議幹部会第一副議長を派遣した。ソ連と同じ社会主義だった他の東欧諸国も、右倣えでナンバー2の使節を送ってきた。相互に相談したことは明らかだった。しかし大喪終了後、ブルガリアの使節のタンチェフ国家評議会第一副議長は「これだけの盛儀には元首たるジフコフ議長が訪日すべきだった」と日本側に感想を漏らしたという。以上は、「大喪の礼」を現場で指揮した外務次官の村田良平氏が、その著『回顧する日本外交』で明かしている。
韓国は天皇を政治利用するマイナス面も知っている
これからすると、韓国は他国がどのようなレベルの祝賀使節を派遣するか見ていて、ぎりぎりまで誰を派遣するか通告してこない可能性もある。米欧、アジア、アフリカなど多くの国が元首、首脳といった高いレベルの祝賀使節を列席させれば、格落ちの使節を派遣した韓国は埋没する。特に米国との関係において、「韓国は日本との折角の関係改善の機会を自分から捨てている」と見られるのは得策ではないだろう。
また韓国は天皇を過度に政治利用するマイナス面も知っている。李明博大統領(08年~13年)は政権末期に天皇への謝罪を要求して、日本世論の猛反発を受けた。さらに韓国では皇室が韓国に対して親近感を抱いていることを好感する意見もある。明仁天皇は01年の誕生日の記者会見で「桓武天皇の生母が百済の武寧王の子孫であると、続日本紀に記されていることに、韓国とのゆかりを感じています」と述べ、これは韓国でも大きく取り上げられた。格落ちの使節を送った場合、韓国内から批判が起こる可能性もある。文大統領がどう判断するか注目されるのである。