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なぜ試合が終われば、互いにたたえ合って肩を組めるのか?
もちろんすべての選手がラグビー憲章について教えられたわけではないだろう。しかし、と水間は続ける。
「たとえラグビー憲章を知らなかった選手でも、プレーを通して、5つの理念を体験的に理解していくんです」
水間自身もラグビー憲章をきちんと学んだのは、現役を引退し、コーチになってからだった。だが、ラグビー選手としての自身の行動や発言を振り返ってみると、ラグビー憲章の理念に不思議と合致していたという。
「そもそもラグビー憲章に書かれた5つの理念は、子どものころ家庭や学校で教えられることでしょう。友だちを大切にして、ルールを守る……。ラグビーにとどまらず、人が生きていくうえで、とても重要な考え方だと思うんです」
W杯には、20カ国が参加している。それぞれの国が、異なる歴史や文化を持つ。もちろん言語も人種も宗教も違う。さらに言えば、ラグビーの代表チームは国籍にこだわらない。同じ国の代表選手だからといって、同じ価値観を持っているとは限らない。
しかしすべての選手が、ラグビー憲章に示された「重要な考え方」を共有する。だから試合が終われば、互いにたたえ合って肩を組めるのだ。死力を尽くしたゲームのあと、敵味方のサイドがなくなり、仲間になる。それが、ラグビーならではのノーサイド精神だ。
ファンたちも、ラグビーが培ってきた「重要な考え方」に共感を覚えるからこそ、グラウンド外での選手の振る舞いや、ノーサイド後の風景に、心が動かされるのではないだろうか。